トレーナーが教える、ウェイトリフティングの始め方

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筋力トレーニングのルーティンとしてウェイトリフティングを安全に始める方法を、パーソナルトレーナーが解説。

最終更新日:2022年12月6日
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ウエイトリフティングの始め方をトレーナーが解説

何かの技を身につけようとするとき、成果に違いを生むのは練習、一貫性、そして根気強さだ。 ウェイトリフティングを始めようと考えているなら、筋力トレーニングのコーチや認定パーソナルトレーナーが組み立てた計画(プログラムとも呼ばれる)に沿って進めることが助けになる。

ACSM認定パーソナルトレーナーのミゲル・アレマーと、NASM認定パーソナルトレーナーでありファンクショナルストレングスコーチでもあるレクサ・ヘンウッドが、ウェイトリフティングを始めるためのヒントを紹介する。この解説を参考に、モチベーションを高めよう。

ウェイトリフティングの始め方

ウエイトリフティングの始め方をトレーナーが解説

ステップ1:プロの指導を受ける

ウェイトを握る前に、認定トレーナー、スポーツパフォーマンスコーチ、理学療法士など、動作をチェックしてくれる専門家への相談を検討しよう。 初期の段階で、過去または現在のけがの状況や、そのけがに関連する傷みについて相談できる。 動作のチェックは、トレーナーがあなたの運動パターンを把握する手段としても有効だ。 さらに、筋肉のアンバランス、機能が優れた筋群、筋力強化の効果が現れそうな部位、そして特に注意を要する部位に着目するきっかけにもなる。

「自分の体で何が起きているのかを正確に把握すれば、少しはけがを予防しやすくなるでしょう」とヘンウッドは話す。 パーソナルトレーナーに協力してもらえば、体の仕組みをより深く理解できるというわけだ。 以前は自分の限界を低く見積もり、不可能だと思っていた運動が、実はできるということに気づく場合もある。 トレーナーに予算を割けないという場合は、YouTubeやInstagramといったプラットフォームで、動作を自分でチェックする(誰かの手助けが必要な場合もある)さまざまな方法を探すとよい。いずれにせよ、まずはトレーナーを探してみよう。

トレーナーを探す際は、認定機関による資格を得ているかどうかを確認すること。 また、自分が希望するタイプのウェイトリフティングを専門にしているトレーナーを探すことも大事だ。 判断しかねる場合は、候補になったトレーナーに面談が可能かどうか尋ねよう。面談が可能であれば、トレーニングスタイルや考え方について詳しく聞き、どんなトレーナーであるかを把握した上で、指導に関して不明点があれば質問できる。 さらに、フォームを調整したり、ウェイトリフティングの際に合図を出したりとフィードバックを与えてくれるトレーナーは、良いトレーナーだと言えるだろう。

ステップ2:ウェイトの重さにかかわらず、動きに慣れる

動作をチェックしたら、いよいよトレーニング開始。 フリーウェイトを始めたいと考えるのはごく自然なことだが、ウェイトリフティングの初心者や久しぶりに再開する人は、自重トレーニングから始めるのが無難だ。

「自重エクササイズをマスターすることが、ウェイトを持ち上げるのに必要な運動パターンの習得につながります」とアレマーは言う。 体重を使う運動に慣れ、先へ進む準備が整ったら、負荷のレベルや器具を利用できるかどうかに応じて、マシンやフリーウェイトのトレーニングを開始すればよい。

(関連記事:自重ワークアウト(カリセニクス)とは?

ステップ3:器具を利用する

アシスト付きスクワットマシンや座った姿勢で使うレッグカールマシンといったストレングスマシンを利用するメリットは、その動作を覚え、体が負荷のかかった状態に慣れること。フリーウェイトに移行する前に筋力をつけるのにも役立つ。

「マシンを使えば動作に必要なテクニックや安定性をあまり意識しないで済むので、初心者には非常に有効。 マシンを使うトレーニングは、始めたばかりの人や年配の人、けがに悩まされている人に最適です」とアレマーは話す。

ジムに通えない場合や使える器具に限りがある場合は、 創造性を働かせ、負荷を調整する方法を試してみよう。 調整する方法がわからなければ、特定のエクササイズの「調整バージョン」を検索するか、トレーナーなど専門家に尋ねるとよい。 たとえばスクワットマシンを利用できない場合は、ダンベルやケトルベル、また洗濯洗剤のボトルなどの家庭用品を使ってスクワットするのもひとつの方法だ。

アレマーがすすめるマシンは、ライイングレッグカールマシン、ホリゾンタルレッグプレスマシン、シーテッドケーブルローマシン、シーテッドチェストプレスマシン。 こういったマシンは初心者向きで、プッシュ、プル、ヒンジ、スクワットなど、主な動作パターンの1つに取り組めるという。

これらの4種の運動は個別にルーティンに組み込むほか、ウェイトを使って適宜8~12回、3セット行うワークアウトを組み立ててもいいとアレマーはアドバイスする。 自信がない場合は、必ず軽めのウェイトから始めて徐々に重さを加えよう。重すぎるウェイトを使うとけがのリスクを負ったり、正しい動作ができなくなったりする。

トレーナーにサポートしてもらうか、信頼できるトレーナーが作成した動画を利用すれば、フリーウェイトをルーティンに組み込むこともできる。フリーウェイトとマシンのどちらのトレーニングにも同様の効果を期待できることが、研究により明らかになっている。

ウェイトリフティングを始める際に考慮すべきその他のヒント

ウエイトリフティングの始め方をトレーナーが解説

取り組むワークアウトのタイプを決める方法は?

トレーニングのメニューの組み合わせは、多くの場合、設定目標によるが、取り組める日数にもよるとヘンウッドは話す。 週に1~2回しかトレーニングに取り組めない場合に彼女がすすめるのは、全身を使うワークアウトだ。その理由は、「必要な部位をもれなく鍛えられるからです」とのこと。

プログラムに関する意見は専門家によってまちまちだが、それはそれで当たり前のこと。 最も重要なのは、自分が楽しめて、長く続けたいと思うようなプログラムを選ぶことだ。 自分にとって最も効果の高いプログラムを見つけることが大切。 あなたの目標と、体やライフスタイルに合うワークアウトを把握している専門家にアドバイスしてもらうのがベストだ。

どれくらいの頻度でウェイトトレーニングを行うべきか?

初心者ならウェイトトレーニングは週3日(または徐々に増やす)が望ましく、2日続けて行うことは避けたいとアレマーは語る。セッションごとに特定の筋群を鍛えるのではなく、全身のワークアウトに取り組む計画であればなおさらだ。

アレマーによれば、ウェイトトレーニングの合間に休養日を挟むことでリカバリーが促され、オーバートレーニングなどで疲労を感じることなく、ワークアウト中も高い負荷レベルを維持しやすくなる。

トレーニングで特定の筋群を鍛えることをアレマーは推奨していない。 初心者が最も進歩しやすいのは、大きな複数の筋肉群を一度に使い全身を鍛えるコンパウンドエクササイズと、座った姿勢で行いローテーターカフを鍛えるエクスターナルローテーションといった、小さい筋肉群をターゲットにするウェイトトレーニングを組み合わせたプログラムだという。

ウェイトリフティングを開始するときは、短期間に負荷をかけ過ぎて疲弊することのないよう、いつものトレーニングの補足として始めてほしいとヘンウッドは話す。 たとえば長距離ランナーがルーティンにウェイトリフティングを加える場合は、それまでまったく行っていなかったウェイトトレーニングに週5日励もうとするのではなく、週に1回筋力トレーニングを加えることを検討するべき。 常に体の声に耳を澄ませ、体の調子に応じてランニング(または他のトレーニング)のルーティンを調整する必要もあるだろう。

体の使えるエネルギーには限りがあり、さらに初心者は短期間に負荷をかけ過ぎる傾向があるので、トレーニングは1時間以内にとどめることが大事だとアレマーは話す。 最適なトレーニング時間について決定的な結論は得られていないが、パーソナルトレーニングやグループでのフィットネスクラスのほとんどは1時間以内だ。 端的に言えば、トレーニングに時間をかけ過ぎると、筋肉が回復する力を妨げるおそれがあるということ。

十分に回復しないまま過度に長時間のトレーニングを行うと、トレーニングによる疲労と休息時間のバランスが崩れ、パフォーマンスの低下につながるおそれがある。 このアンバランスは、すぐに対処しないとオーバートレーニング症候群に発展する可能性がある。そうなると、トレーニングのストレス要因とトレーニング以外のストレス要因により、長期にわたってパフォーマンスが低下し、 疲労、気分の落ち込み、やる気の喪失、不眠、集中力の低下といった症状が現れる。

(関連記事:オーバートレーニング症候群とはーその予防法

どの程度ハードなウェイトトレーニングを行うべきか?

セッションの後、体力を使い果たした状態になるのは望ましくないとヘンウッドは説明する。 手ごたえはあるが疲れ果ててしまわない、ぎりぎりのラインでトレーニングに取り組む必要があるとのことだ。 たとえば、トイレに座って排便するときや階段を上るとき、物に手を伸ばしたり物を拾ったりするときに痛みを感じるのは良くない。 筋力強化や筋肉量増大が目標なら、これは特に重要。毎日限界まで追い込むと筋肉が回復するのに十分な時間が取れなくなるため、目標の実現が難しくなると話す。

アレマーは、長い目で見て関節の健康を維持するために、重すぎない(または軽すぎない)ウェイトを選ぶようすすめる。 軽めのウェイトを使って回数を増やすか疲れを感じるまでウェイトトレーニングを行った場合、重いウェイトを使って短い回数のトレーニングを行ったときと同様の効果が期待できることが、研究によって明らかにされている。

正しいテクニックを習得する方法は?

テクニックについては考慮すべきポイントがたくさんある。 特定の運動のテクニックをしっかり身につけるには専門家の力を借りるのがベストだが、 とりあえず参考にできる基本原則はいくつかある。 スクワットなど下半身を鍛えるウェイトトレーニングを行うときは、足を腰幅程度に開くべきだとアレマーは語る。 ベンチプレスやデッドリフトなど、プッシュやプルを行う運動では、たいてい手首はまっすぐに伸ばした方がよい。 手首が曲がっていることに気づいたら、それはもっと軽いウェイトを選ぶべきというサインだ。

ウェイトリフティングを始める前に身につけておくべき習慣とは?

一般的には、必ずウォームアップを行い、正しいフォームを意識し、トレーニングの進捗状況を把握できることが望ましい。 また、どのような目標を立てていようと、ワークアウト中や日々の生活のエネルギー源になる食事をきちんと摂ることが重要だ。 栄養面でのサポートを管理栄養士に頼んでもよいだろう。 栄養に加えて、フォームローリングや深部組織マッサージといったリカバリーワークを行い、十分な睡眠をとることも忘れてはならない。

文:タマラ・プリジット

公開日:2022年12月6日

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