ランニングで脚の筋力を鍛えられるか?

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ランニングでは間違いなく脚の筋肉を使うが、脚の筋力強化につながるのだろうか? ここでは、その答えとともに、ランナーが下半身の筋力を鍛えるためのその他の方法も紹介する。

最終更新日:2022年6月29日
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ランニングで脚の筋肉は鍛えられる?

脚に筋肉をつけたい場合、大抵はウェイトトレーニングに取り組もうとするだろう。 ウェイトを使うスクワットランジ、ヒップスラスターは、どれも下半身の強化に適した運動だ。 しかし、ウェイトトレーニングよりも有酸素運動に力を入れるランナーは、脚の筋肉を強化できるのだろうか。

答えは、「場合によっては可能」だ。 ランニングの種類によっては、筋持久力と筋力が向上することが実証されている。 では、筋肉を大きくする筋肥大の効果はどうだろうか。 2014年に『Exercise and Sport Sciences Reviews』で発表された研究論文によると、特別なプログラムを取り入れない限り、筋肥大の効果はあまり大きくないとのことだ。

増強を目指す筋肉の部位にかかわらず、取り組むトレーニングやワークアウトの種類が、目標達成の要となる。

筋力増強の仕組みと筋力の種類

筋肉をつけるには、これまでにないハードな刺激を体に与えなければならないというのが、過負荷(オーバーロード)の原則だ。 負荷が加わることで筋繊維に分解が起こる。これが筋タンパク質分解(MPB)と呼ばれる現象だ。 そして、筋タンパク質合成(MPS)と呼ばれる修復過程で筋繊維が強化される。 MPSはリカバリーの過程で生じ、適切に摂取された栄養素によって促進される。

さらに詳しく説明しよう。 ダッシュかロングランかといったように、どのような負荷をかけるかによって、異なる種類の筋繊維が刺激に反応し、強化される。 ランニングに関係があるのは、遅筋繊維と速筋繊維という2つの骨格筋繊維だ。 遅筋繊維は疲労しにくいが、ゆっくり収縮して弱い力を発揮する。速筋繊維は疲労しやすい反面、速く収縮して強い力をもたらす。

では、自分のランや脚の筋力トレーニングに、これをどう活かせばよいだろうか? ロングランを行うときは、遅筋繊維が長距離にわたってペースを維持してくれる。 一方、スプリントインターバルのようなスピードを出すワークアウトを行うときは、速筋繊維が使われる。 脚の筋肉はすべて、この2種の筋繊維の組み合わせでできているため、持久力ランと全力で行うスピードトレーニングの両方を取り入れて、筋力と体力の向上を図ることが望ましい。 目標に応じて、どちらかの筋繊維に重点を置いてトレーニングしてもいいだろう。

初心者向けのランニングプログラムでは、たいていまず土台となる持久力の向上に重点を置く。 そのためには、心地よいペースでランニングを何度か行うことから始めること。できれば週に何日か取り組みたい。 重要なのはスピードトレーニングを取り入れる前に、まず負荷の低いランをしばらく続けること。スピードトレーニングによる負荷に耐えられる体づくりをするためだ。 この開始時点の取り組み方が、トレーニングを問題なく続けられるか、それともけがを引き起こすかの分かれ道になりうる。

だからこそ、過負荷の原則がうたう重要な項目に従い、少しずつ負荷を高めていくことで、徐々に筋力を強化する必要がある。 体は最終的に現在の負荷に適応してしまうため、ランの強度や頻度を高め、距離を増やそうとしない限り、ランニングのパフォーマンスは向上しないのだ。テンポランやインターバルに取り組む前に筋力トレーニングを取り入れることが、筋肥大、体力の向上と維持、けがの予防の鍵を握る。

計画的なトレーニングに取り組めば、以下の主要な下半身の筋肉から脚の筋力を強化できるだろう。

  • 大腿四頭筋:太ももの前側

  • ハムストリング:太ももの裏側

  • 腓腹筋とヒラメ筋:ふくらはぎ

  • 大臀筋:お尻

ランニングで脚の筋肉は鍛えられる?

ランニングだけで脚の筋肉を鍛えられるか?

初心者ランナーであれ、ベテランランナーであれ、徐々にワークアウトの時間を延ばし、強度を高めていくことで筋力や持久力が強化され、進歩につながる。 初心者ならば、脚の筋肉を鍛えることはいくぶん簡単だろう。毎回のランニングが筋力強化の機会になるからだ。

経験豊富なランナーならば、スプリント、ヒルトレーニング、テンポランなどのワークアウトに取り組めば、脚の筋力を強化できる。 ランニングの経験にかかわらず、ワークアウトのルーティンは、慎重に、そして計画的に変更を加えていくこと。 焦って負荷をかけ過ぎると、けがをして休養を余儀なくされることになりかねない。

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ランニングで脚の筋力を鍛えられるのは間違いないが、この有酸素運動に加えてウェイトトレーニング、水泳、ヨガ、ピラティスなども行うといいだろう。ターゲットになる筋肉が鍛えられ、ランニングのフォームや歩行効率、骨の強度の向上につながる。

筋力強化に最適なランニングの種類

脚の筋肉を鍛えることは、ランニングのパフォーマンス向上にもつながる。 基礎となる持久力が十分につき、筋力トレーニングの計画を立てたら、次はスピードトレーニングを取り入れて、体力と脚の筋力をさらに強化しよう。

スプリントインターバルは、筋力を高める効果が特に期待できる。 2017年に『International Journal of Exercise Science』で発表された研究論文では、高負荷インターバルトレーニング(HIIT)に取り組んだランナーは、心肺フィットネスが向上しただけでなく、大腿四頭筋が大きくなったという。

10週間にわたるインターバルトレーニングプログラムの参加者は、大腿四頭筋が10%大きくなったのに対し、 このプログラムに参加しない対照グループには、目立った変化は見られなかった。

この研究では、サイクリングやランニングといった有酸素運動は、適切にプログラムを組み立てることで筋肉量を増やす効果が期待でき、HIITを取り入れれば特に効果的だと結論付けている。

ランニングで筋肉を鍛えるためのその他のヒント

筋肉を鍛えるには、その部位にかかわらず、トレーニングと食事の両方に常に気を配るようにしなければならない。 十分なタンパク質を摂取することが特に重要だ。 国際スポーツ栄養学会(ISSN)は、アスリートが筋肉をつけ、維持するために、1日に体重1kgあたり1.4~2gのタンパク質を摂取するよう推奨している。

そしてリカバリーも大事なポイントだ。 インターバルトレーニングに励んだ後の数日は、体を休ませよう。 リカバリーの方法は人によって異なり、気分によって変えてもいい。

たとえば、一週間の間にサイクリング、水泳、ヨガなどのアクティブリカバリーのエクササイズを取り入れると、関節の可動域を維持しながら体を休ませ、筋肉を修復できる。 別の週には、2~3日完全に休養を取りたいと思うこともあるかもしれないが、それでも構わない。 体の声を聴き、体が求めるリカバリー法を探ることが重要だ。


運動からの適切なリカバリーには、睡眠も欠かせない。睡眠には、筋肉組織の成長と修復を促す働きがある。 現に、毎晩の睡眠の質を確保できないと、筋力低下につながることがわかっている。

よくある質問

脚に筋肉をつけたい場合に避けるべきランニングのワークアウトはあるか?

さまざまなランニングのワークアウトに取り組めば、多様なアプローチで全般的な体力を向上させられる。 スピードインターバルトレーニングには筋肉を大きくする効果があり、ヒルトレーニングには抵抗力をつけ、筋力を強化する効果がある。

一方、長距離の持久力ランは、脚の筋肉を大きくするという点ではそれほど効果が見込めない。 『Journal of Physical Therapy Science』で2016年に発表された研究論文では、ランニングのさまざまな距離(10K、ハーフマラソン、フルマラソン)を比較した結果、距離が長くなるほど筋肉の損傷が増えることが明らかになっている。

ロングランは心肺持久力の向上には効果的だが、筋肉増強をメインの目標にするのなら、ウェイトトレーニングも取り入れた方がいいだろう。 筋力トレーニングを習慣にすれば、けがの予防もでき、ランニングに求められる体の回復力も養われる。

ランニングで筋力を鍛えるには、どのくらいの頻度でトレーニングに取り組むべきか?

有酸素運動で筋力を強化するには、一定基準以上のトレーニングを積む必要があることが、研究で明らかになっている。 2014年に『Exercise and Sport Sciences Reviews』で発表された研究論文によれば、負荷の低い筋収縮を伴うトレーニングから、通常の筋力トレーニングと同程度の効果を得るには、週に4~5日、30~45分のワークアウトに取り組むことを目標にする必要がある。 ただし、体の声に耳を澄ませ、けがをせずに目標を達成できるよう十分に時間をかけることを忘れてはならない。そして何より、プロセスを楽しむことも重要だ。

ランニングで筋力を鍛えたい場合、筋力トレーニングをスキップしてもよいか?

International Journal of Environmental Research and Public Health』に掲載された2019年の研究論文によれば、筋力を鍛え、筋肉の成長を促す効果が最も高い手段は、レジスタンストレーニングだ。 ランナーにとって筋力トレーニングは、パフォーマンスの向上にも役立つだろう。

レジスタンストレーニングには、筋力のアンバランスを整える効果もある。 さらに、週に1~2日筋力トレーニングを組み込めば、ランニングの休養日を持つことができる。

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公開日:2022年2月21日

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