最適なワークアウトの長さとは?
アクティビティ
短時間の高負荷セッションから長時間の持久力トレーニングまで、目標やライフスタイルに合わせてワークアウトの時間を調整する方法を学ぼう。

ワークアウトに時間をかけることができる日もあれば、忙しいスケジュールの中に10〜20分の有酸素運動やコアトレーニングを詰め込む日もあるだろう。どちらも長期的な健康の増進につながるが、最も重要なのはトレーニングの一貫性と多様性だ。
最新の『Physical Activity Guidelines for Americans (米国人のための運動ガイドライン)』では、成人の場合、少なくとも週に150分間の中程度の負荷の運動、または75分間の高負荷のアクティビティを行うことが推奨されている。1日30分の運動を5日間行ってもよいし、平日に20分のセッションを数回行い、週末に長時間のワークアウトを行ってもよい。ライフスタイルに合った時間の使い方を選ぼう。
「ワークアウトの長さは、その人の目標によって異なります」と、STRIDE Fitnessの認定パーソナルトレーナーであり、プログラミング、教育、エクスペリエンス部門の副部長を務めるエイプリル・メドラノは言う。「時間に制約がある場合、少しの運動でも何もしないよりはずっと良いのです」
ワークアウトの理想的な長さとは?
では、ワークアウトの長さは重要ではないのだろうか。「これは難しい質問です」と、The Edge Fitness Clubsの認定ストレングス&コンディショニングスペシャリストであり、フィットネス部門の副部長を務めるマイク・ポワリエは言う。簡単に言えば、ワークアウトの理想的な長さは、そもそもなぜ運動するのか、という目的によって異なる。
あなたが運動する目的を考えてみてほしい。長期的な健康を維持するためにワークアウトを行う人。マラソンのような持久力を要するイベントに向けてトレーニングをする人。短期間で筋力を鍛えたい人。目的が異なれば、求められる運動の強度、量、頻度のバランスは変わり、そうした要素すべてがセッションの長さに影響を与える。
「プログレッシブオーバーロード(漸進性過負荷)を達成するには、さまざまな方法があります」とポワリエは説明する。運動強度は時間に左右されない。一方で運動量は休憩の長さによっても変わり、時間に左右される。そして頻度は、ワークアウト自体の長さというよりは、その回数を増やすことを意味すると、ポアリエは説明する。
つまり、2人が毎週同じ時間トレーニングをしても、セッションの構成が異なる可能性は大いにあり、そして、どちらのアプローチも効果的なものになりうる。重要なのは、目標とスケジュールに合った、そして一貫性を保てるワークアウト時間を選択することなのだ。
短時間のワークアウト(10〜30分)のメリット
HIIT(高負荷インターバルトレーニング)のように、素早いエネルギーの発揮や瞬発的な動きを含む短時間ワークアウトは無酸素系に働きかけ、パワー、スピード、瞬発を司どる速筋線維をターゲットとする、とメドラノは言う。
2025年の調査では、HIITは血圧、血管機能、最大酸素摂取量(VO2 Max)などの心血管マーカーを大幅に改善すること、そして多くの場合、同じ運動を一定して続ける有酸素運動よりも短時間で改善することが明らかになった。また、同じ調査では、体脂肪と腹囲の減少が示されており、短時間での激しいワークアウトは心臓の健康と体組成の両方をサポートする効率的な方法だということもわかっている。
「HIITは効率性に優れています」とポワリエは付け加える。「すべての代謝システムが消耗し切るまでトレーニングをするからです」。つまり、これらのワークアウトは、非常に短い時間で複数のエネルギー供給経路をフル稼働させるのだ。しかし、HIITセッションだけに頼ると回復が難しくなる可能性があるとポアリエは指摘する。考えてみてほしい。常に最大限、またはそれに近い水準でトレーニングしている場合、筋肉と中枢神経系を完全に回復させる時間がない。1週間の中で、低強度または長時間のセッションを組み合わせてトレーニングすれば、バランスを維持し、燃え尽き症候群になるリスクを軽減できる。
では、短時間のワークアウトが最も効果的なのはいつか。「短時間のワークアウトと長時間のワークアウトには、それぞれに価値があります」とポワリエは言う。「しかし、ライフスタイルにもよりますが、平日のスケジュールには短時間かつ集中的なセッションの方が適しているかもしれません」
長時間のワークアウト(45〜90分)のメリット
長時間のワークアウトでは、時間をかけることで体を安定したリズムに慣れさせる。このとき、体は徐々に有酸素運動に適応していく。「長時間のセッションでは、単に激しい運動に耐える力が付くのではなく、心血管系を運動に適応させ、強化させることができます」とメドラノは言う。運動時間が長いと、代謝は「ハード」よりも「スマート」に働く方法を学習し、体はより効率的に燃料を使えるようになる。
これにより、本当の意味で有酸素運動の力を高めることができる。「あなたのエンジンは文字通りあなたをアップグレードさせます」とメドラノ。持続的な運動により、体 はより多くのミトコンドリアを生み出す。ミトコンドリアは、パワー、スタミナ、長期的な成長をサポートするエネルギー工場だ。
さらに、有酸素系が強くなると、回復力も向上する。各セットやインターバルの間の回復、さらにはトレーニングをした日の回復が、どんどん早くなるのだ。さらに、長時間の安定的なセッションは基礎体力作りに役立つ。基礎体力があれば、ハードなワークアウトをより簡単に感じ、燃え尽きることなくより多くのトレーニングをこなすことができる、とメドラノは説明する。
つまり、長時間のワークアウトは、持久力を鍛えたい人や、有酸素運動能力の構築または向上を目指す人に最適というわけだ。
目標ごとの理想的なワークアウト時間は?
目標がワークアウトの内容を決める。筋力や持久力など、トレーニングの目的を確認し、それに合わせてセッションの長さを調整しよう。
筋力トレーニング
筋肉量の増加を目標としているなら、1セッションあたり45~60分が最適だ。「筋肉をつけるには、質の高い繰り返しのトレーニングが必要です」とメドラノ。
筋力に焦点を当てたトレーニングに、必ずしも長い時間は必要ない。それより大事なのは集中だ。「運動強度によって必要な時間は変わります」とポワリエは説明する。より重いウェイトを持ち上げ、セット間に十分な休息をとるのであれば、25分で十分に筋力を増強することができる。
有酸素運動による持久力の強化
持久力の向上を目標とする場合、トレーニングの目的によっても異なるが、セッションの長さは45分以上が良いだろう。運動時間を長くすることで、心血管系が適応するための時間を与え、持続的な運動に必要な有酸素運動能力を構築できる。
研究もこれを裏付けており、『Circulation』誌に掲載された大規模な調査によると、推奨される1週間の最低運動量よりも2〜4回多く運動している人々は、心血管疾患で死亡するリスクが大幅に低下することがわかっている。さらに、週に約300〜600分の中程度の運動をしている人々は、健康に最も良い影響が見られた。
ワークアウトを徐々に増やす
ワークアウトを始めると、つい長時間のセッションに全力を注いだり、連日激しい運動をしたくなったりするもの。しかし、運動時間や運動量を大きく増やすと、体が適応しにくくなり、怪我のリスクが高まる可能性がある。アメリカスポーツ医学会は、緩やかに負荷を上げることを推奨しており、この原則を守ることで、身体に過負荷をかけることなく、筋力とスタミナを鍛えることができる。
ポワリエとメドラノは、スケジュールと目標に合わせてトレーニングの組み合わせを決めることを推奨している。短時間の激しいワークアウトは、忙しい平日に適しているかもしれない。一方で、週末はより多くの運動量をこなすことができる。
「さまざまな時間のトレーニングを組み合わせることは、バランスの取れた身体づくりへの有効なアプローチです」とメドラノは言う。「標準的な45~60分のワークアウトを週に2~4回行い、より短いメタボリックコンディショニング(メトコン)セッションを週に1~2回行うことをお勧めします」。また、ほとんどの人にとっては、週に1回の長時間ワークアウトで十分だとメドラノは付け加える。
よくある質問
10分間のトレーニングで十分ですか?
運動量の程度に関わらず、何もしないよりはやるほうがずっと良い。2022年に『Nature Medicine』誌に掲載された研究によると、体系的な運動ルーティンを確立していない年配の成人は、1回1〜2分間の激しい運動を日常生活に散りばめ、1日あたり合計3〜4分間の運動をするだけで、心血管疾患、がん、およびすべての原因による死亡リスクが著しく低下することがわかっている。
運動に10分しか使えない平均的な成人には、早歩き、HIITワークアウト、コアトレーニング、またはポワリエが指摘するように、単一の筋肉群をターゲットにした運動が有効だ。
毎日短時間の集中的なワークアウトをするのと、頻度は少なくても長時間のワークアウトをするのとでは、どちらが良いですか?
絶対的に「正しい」スケジュールというものはない。自分の生活に合っており、一貫性を保てるスケジュールを選ぼう。
ポワリエは、どちらのアプローチも有効だと強調している。「一貫性を保つことが最も重要です」と彼は言う。「自分のライフスタイルに合い、一貫性を保てるスケジュールが最も効果的です」。短いセッションを毎日行うほうがやりやすい人もいるだろう。一方で、週に数回長時間のトレーニングを行うほうが現実的だと言う人もいる。
日々の生活に合わせたトレーニングルーティンを作るべき、とメドラノも同意する。運動を始めたばかりの人は、まず習慣づけに集中することが大事だ。「1日5分でも重要」と彼女は言う。「完璧を目指すより、一貫性をもって続けるほうが大事です」

























