なぜヨガでスポーツパフォーマンスが上がるのか

スポーツ&アクティビティ

定期的なヨガのプラクティスは、スポーツパフォーマンスに欠かせない3つの要素、すなわちけがの防止、筋機能の向上、ストレスへの対処に役立つ。

最終更新日:2022年1月14日
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アスリート向けのヨガ:ヨガでスポーツのパフォーマンスを向上

心身をリラックスさせる効果があるヨガだが、メリットはそれだけにとどまらない。 ヨガはあらゆるクロストレーニングのルーティンにおいて、アスリートにとって有益だ。さらに他のスポーツでも、パフォーマンスを向上させることができる。

ヨガが柔軟性、バランス機能、筋肉の協調性、肺機能を高めることは研究によって明らかになっている。 また、アスリートは、ヨガを行うことでストレスとうまく付き合っていけるようにもなる。普段、あまり意識していないかもしれないが、ストレスへの対処は、リカバリーやパフォーマンスの質に大きく関わってくる。

ヨガと言えばゆっくり動くものだと思う人が多い。 あながち間違いではないが、 一口にヨガと言っても、スローペースな陰ヨガやリストラティブヨガから、ハイペースでカロリーを燃焼させるパワーヨガ、ヴィンヤサヨガ、ビクラムホットヨガまで種類豊富だ。

ゆっくりとした動きが中心のタイプのヨガでは、長めのポーズでバランスを保つよう心がけながら、深い呼吸を繰り返していく。 傍から見れば簡単に見えるかも知れない。だが、ウッティタ・ハスタ・パーダングシュタ・アーサナ(片足立ちのまま、もう片方の足の親指を手でつまんだ状態で足を伸ばす)のポーズを10回呼吸する間キープしてみたらどうだろう。股関節屈筋を開いて大臀筋を使って姿勢をまっすぐに保たなければならないため、きっと身体がブルブルと震え出してしまうだろう。 こうしたスロータイプのヨガはコアの強化に効くので、どんなスポーツにも効果がある。

一方、速いテンポのヨガのフローは、スタミナや持久力を付けることができ、心臓血管の健康増進に最適だ。 筋肉を伸ばしたり、身体のコリ、腱や関節の動きの悪さを緩和したりすることに重点を置いた一連の動きを流れるように行っていく。 ヨガが多くの人のトレーニングに欠かせないものになっていること、そして初心者でも抵抗なく始められるというのは、こういった理由からだ。

ヨガは、バランスやコアの強化に効く上に、スタミナや持久力のアップにも一定の効果が認められる。そのため、さまざまな運動をこなすことのできるバランスのとれたアスリートの中には、シーズンのオンオフにかかわらず、トレーニングにヨガセッションをいくつか組み込んでいる人が多い。

ヨガのプラクティスが効果的なスポーツは?

  1. 1.サッカー

    優れたサッカー選手は、バランスを保ちながら、さまざまな方向へ連続で動く技術をマスターしている。 スライディングタックルの際に行われるような、通常の可動域(ROM)を超えて股関節屈筋を伸ばす動きには、コアの強さや筋肉の協調性、バランス感覚が求められる。サッカーには欠かせないスキルだ。 このスキルなしでは倒れてしまうことになる。 このスキルを身に付けて磨きたいサッカー選手には、ヨガが役に立つだろう。

    『International Journal of Yoga』に掲載された2016年の研究では、10週間にわたって、大学のサッカー選手たちに週2回のヨガセッションを普段のトレーニングに加えてもらった。 その結果、柔軟性とバランスが改善され、関節可動性とROMの向上が見られたと報告されている。

    ワールドクラスのサッカー選手たちがヨガを愛好していると公言する背景には、こういった裏付けがあるのだ。ヨガのおかげでハムストリング、鼠径部、大腿四頭筋、ふくらはぎ、大臀筋、腰、首、脇、コアの動きがよくなったという。 さらにヨガは、アスリートの年齢が原因となるけがの予防にも特に効果的だ。

  2. 2.バスケットボール

    偉大なバスケットボール選手であるレブロン・ジェームズは、アスリートのパフォーマンスを向上させる方法としてヨガを推奨している。 バスケットボール選手にとって俊敏性、柔軟性、筋肉の協調性を持ち合わせていることは、けがを防ぐためにも重要な要素。 ヨガは、初心者やスター選手を問わず、これら3つの要素の向上に役立つ。

    『Pedagogics Psychology Medical-biological Problems of Physical Training and Sports』に発表された2013年の研究では、ヨガとバスケットボールの関係について調査が行われた。 この研究に参加した大学のバスケットボール選手たちは、トレーニングルーティンにヨガのプラクティスを取り入れた。 彼らは9か月間、週4回のヨガクラスを受講。 その結果、垂直跳び、フリースロー、スリーポイントシュート、戦術的な動き、スピード、スピードの持続力、バランス能力といった主要なパフォーマンス指標が大幅に向上していることがわかった。

    だが、なにもこれはNBAやプロのバスケットボール選手に限ったことではなく、 バスケットボールの初心者であっても、週に1回、ヨガのプラクティスを取り入れれば効果が出ると考えられる。 『Journal of Sports』に掲載された2019年の研究では、バスケットボールの練習だけを行ったグループより、練習にヨガを加えたグループの方が、敏捷性、柔軟性、スピード、強靭さ、体脂肪、シュートやパスやドリブルの能力に優れていたという結果が出た。 しかも、なんと参加者たちが行ったヨガのセッションはたった30分だったそうだ。

  3. 3.アメリカンフットボール

    NFLの選手たちもヨガのプラクティスに取り組んでいる。 フットボールの練習では、ほとんどの時間をウェイトリフティングや基礎練習に費やす。だが、選手にとって本当に必要なのは、けがの予防と、ストレスの対処法だ。 ヨガは、これら両方をカバーする。

    2021年の最新の研究では、けがをしたフットボール選手の人数の調査が行われた。 NFLの4シーズンの間に報告された負傷者の数は3,025人。 この数字を見ると、フットボール選手としてパフォーマンスを維持し向上させていくには、けがをしないことが何よりも大切だということがはっきりとわかる。 この解決策として、シアトル・シーホークスはトレーニングにヨガを取り入れることにした

    けがの予防に果たすヨガの役割について、さらに詳しく見てみよう。

けが予防のためのヨガ

ヨガは、緊張をほぐすことでけが予防の効果を発揮する。 たとえば、ピジョンポーズなどの股関節を開くポーズは、下肢の運動連鎖の改善が期待できる。

けがの予防に役立つヨガの効果:

  • 柔軟性の向上
  • 筋肉のアンバランスさの調整
  • 運動パターンの強化
  • 炎症を抑え、酸素流量を上げることで、身体の回復をサポート

2020年の研究では、サッカー選手のグループを対象に、ヨガがどのようにけが予防に役立つのかを調査し、その結果、ヨガはけがを軽減させる効果を持つことがわかった。 具体的には、ヨガによって関節や筋肉が強くなり、たとえけがを負ってしまったとしても、それにうまく対応できるようになるというわけだ。

また、ストレスを撃退するというヨガの性質は、けがのリスクを高める要因である精神的疲労の予防にも一役買っている。 2020年に行われた研究では、不安や気分の落ち込みを訴えるアスリートのけが発生率が2.1倍になることが判明した。 こうなると、メンタルヘルスケアが欠かせない。エクササイズとしてのヨガの出番だ

ヨガはストレスを軽減し、集中力を高める

言うまでもなく、ヨガは単なる運動ではない。 ヨガはメンタルプラクティスでもあり、それが他のスポーツのパフォーマンスを高めるという側面に結びつく。プラクティスの中でよく行われる瞑想による心理的効果の表れだ。 ストレスに悩まされているアスリートは多い。 大学やプロのアスリートは一般の人と比べてより多くのストレスを感じていることが研究で明らかになっている。 厳しいトレーニング計画や結果への期待がストレスを引き起こし、そのせいでパフォーマンスが低下してしまうことがある。

身体意識を鍛えるためのヨガ ゆっくりと呼吸し、副交感神経反応の「休息と消化」状態に入ると、体内の酸素量が増加する。 呼吸が精神集中をもたらし、1つ1つのポーズにより身体の集中力が高まる。 これが、神経をリラックスさせる心と身体のワークアウトとなる。

定期的にヨガのプラクティスを行うことで、アスリートはマインドフルネスを習得したり、目まぐるしく切り替わる思考を落ち着かせ、心の静寂を感じたりできるようになる。 2011年の研究では、ヨガがストレス、不安、落ち込み、慢性的な痛みを軽減し、睡眠を改善して、全般的な健康や生活の質の向上に役立つと結論付けられた。

ヨガによる運動パターンの強化

ヨガは、スポーツの目的別アスレティックトレーニングに取り入れることができる。 ヨガのポーズの中には、スポーツの動作によく似たものもある。 たとえば、足を伸ばし持ち上げてキープするポーズは、サッカーのキックの動作に似ている。 筋肉を鍛えて、キックの動作を強化するのは、ジムでレッグエクステンションやヒップアダクターといったマシーンを使ってトレーニングすることもできる。 しかし、ヨガのプラクティスとは違って、こういったトレーニングでは関節の柔軟性やバランスの改善は望めない。

ヴィンヤサヨガで行うフローには、運動パターンをスムーズにさせる効果がある。 太陽礼拝は、よく知られたヨガのフローだ。 静的ストレッチの代わりに、ヴィンヤサヨガのクラスを受講して、通常の関節可動域(ROM)以上のストレッチを行えば、普段の動きが楽になる。 このエクササイズは、筋肉を伸ばし、筋肉の持久力やスタミナを付けるのに役立つ。

ヨガによって、アラインメント、ROM、筋組織の回復が改善される。 そのおかげで運動連鎖が強化され、結果としてパフォーマンスが上がる。この効果は、競技の種類や、初心者かプロかといったレベルに関係なく感じられるはずだ。

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公開日:2021年12月28日

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