雲の上でプレー:香港の屋上バスケットボールコート

Innovation

革新的なデザインが、世代の異なる人々をどのようにつなぎ、コミュニティを活気づけ、スポーツをよりインクルーシブなものにできるかを検証するケーススタディ。

最終更新日:2021年10月22日
この記事は8分で読めます

「常識をくつがえせ」は、スポーツ、健康、能力開発などの分野における画期的なイノベーションを紹介するシリーズ。

メロディー・スィウーは学生時代、ちょっとした悩みを抱えていた。アートを愛するのと同じくらい科学が好きだったため、どちらを選択するべきか迷っていたのだ。最終的に彼女は両方を選んだ。「これら2つの分野を組み合わせた将来を想像したら、建築周辺のキャリアがごく自然と浮かんできました」と、最終的に進むことになった進路について彼女は語る。

現在香港を拠点とするOne Bite Design Studioのシニア建築デザイナーとして働くメロディーは、アートと科学を日常的に融合させている。静かなティーショップや賑やかなホテルロビーから、この地域によく見られる公営住宅団地の屋上バスケットボールコートまで、さまざまな公共スペースプロジェクトが彼女のもとに持ち込まれる。

どのプロジェクトにもそれぞれ固有の考慮事項がある。初めてバスケットボールコートの再設計を行ったとき、メロディーとチームメンバーたちは実際にバスケットボールをプレーして、何を考慮すべきかを学んだ。4つのプロジェクトを完了させた彼らは、いくつかの機能的な経験則を特定することができた。いわばスポーツコートデザイナーのプレーブックの完成だ。

  • 耐久性を重視した設計。公共スペースに関して言えば、どんなに外観が美しくても長持ちしなければ意味がない。「簡単に傷がつけられたり、マークなどつけられたりしないよう、コートに適したベースカラーを選択する必要があります」とメロディーは言う。

  • 限られたスペースを効率的に使う。バスケットボールは香港で人気が高いため、プレーヤーはピックアップゲームに参加するのに1時間以上待たなければならないことが少なくない。それぞれの遊び場スペースにコートをたくさん設計すればするほど、より多くの人々がプレーできるというわけだ。

  • コミュニティと提携する。スペースを最大限に活用するには、スポーツコートを適切な仕様に合わせて設計する必要がある。メロディーとチームはバスケットボールの専門家ではなかったため、専門知識のある協力者を探した。

  • 持っているもので勝負する。既存の構造を刷新することは、一から新しいもの作ることとはまったく異なる挑戦。プロジェクト成功の鍵を握るのは、創造的に問題を解決することと、制約を受け入れることだ。

デザイナー、アスリート、バスケットボール愛好家が互いに協力して、香港中の公共のバスケットボールコートを活性化している。その様子が上のビデオに映し出されている。以下で、彼らの最近のプロジェクトの要約をチェックしてみよう。バスケットボールをプレーするためのすばらしいスポットも紹介されている。

啟業(カイイップ)コート — コラボレーションの力

コートの内外で、チームが力を発揮している。メロディーと彼女が運営するOneBiteのクルーは、この初めての改修プロジェクトで、香港のバスケットボール愛好家のためのコミュニティ、SLABのデザイナー仲間と協働することになった。皆で役割を効率的に分担し、それぞれの仕事に取り組んだ。SLABは、都会の夜のスカイラインに触発されたグラフィックとカラーでビジュアルトーンを設定し、メインコートの設計業務を担当した。一方OneBiteは、それらのビジュアル的要素を屋外の遊び場に反映。雨季の間にもアスリートがプレーし続けられるようオーバーヘッドカバーを設置するなど、実用面での修理およびプロジェクト管理も手がけた。その結果、全体が見事なバランスで調和する機能的な芸術作品が誕生した。

青衣(チンイ)コート — 地方都市のプライド

「香港では、コートの色は通常、赤と緑と決まっていて単調なんです」と、大多数の公共の遊び場で使用されている標準的なカラーについてメロディーは言う。それからすると、青衣のレトロな趣のテクニカラーは、見たこともないような斬新な印象を与える。それらの配色は一見単純で、見かけの美しさをアップグレードしただけのように見えるかも知れないが、地域特有のデザイン言語をベースとしたある意味が込められている。その形は青衣島の地形を反映し、カラーパレットは有名な地元の魚に触発されているのだ。「ここの居住者たちがアイデンティティや責任、さらには誇りを感じてくれることを願っています」エリア全体のアパートの窓からこのデザインがどのように見えるかを振り返りながら、メロディーは語った。

兆禧(スィウヘイ)コート — つながりを広げる

One Biteチームが最初にこの空間を調査したとき、段差のある階層構造の施設は荒廃しているだけでなく、上と下のコートの間には障壁があって間は自由に行き来できなかった。そこで彼らは最初のタスクとして機能面の変革に取り組み、利用者が自由に循環できる観覧席のような座席エリアを作って開放感を持たせた。次に彼らはスペースを多目的に、そして多世代の人々が使えるようにすることに注力。このコートはさまざまな年齢層や関心を持つ住人が住む公営住宅の上にあるため、設計チームはスペースを最大限に使って散歩道やタイヤ遊具、バスケットボールコートを作り、さらには子どもが創造的に動き回って遊べるように工夫を凝らしたのだ。コートのマーキングが正しく、正式な試合ができることを確実にするために、メロディーたちは地元のリーグである香港プレイグラウンド協会の協力を得て、現地を検証した。

明德(ミンタック)コート — 女子チームを育てる

香港では、人気のバスケットボールコートの予約を取るのは難しい。常に歓迎されているわけでなく、真剣に受け止められにくい男性以外のプレーヤーにとっては特に厳しい。そこでOne Biteチームは、コミュニティパートナーと協力して、性別に関係なくどんなアスリートでも安心してバスケットボールをプレーできるインクルーシブなスペース作りに着手。チームが明德コートに適用したクリエイティブ戦略について、「テーマは女子優先です。アスリート、特に女子が安心してスポーツを楽しめる安全な空間を作りたいと考えています」とメロディーは言う。この価値観は、性同一性の非バイナリスペクトルを表す色のグラデーションなど新たなデザインに反映されている。2つあるコートのうちの1つには、大胆な「W」グラフィックを施した中央ステージを設置し、女性に使用の優先権があることを示している。

雲の上でプレー:香港の屋上バスケットボールコート

プレーする準備ができたらこの記事の執筆時点ではパンデミックのために公共のコートが断続的に閉鎖されているが、ここで紹介する4つのコートが香港のどこに位置するかを以下の地図で示した。安全になったら、ぜひ訪ねてみよう。

雲の上でプレー:香港の屋上バスケットボールコート

プレースポットが一新Nikeは先日、地元の組織と提携し、香港の別のコミュニティコートの改修に携わった。Nike Grindリサイクルプログラムを通じて、20,000足の中古スニーカーをもとに作られたコートだ。石籬(シェクレイ)グラインドコートの詳細については、Nikeニュースでも紹介している。

ビデオ:アズサ・ウエスト
文:ブリンクリー・フォックス
写真:ビクター・チェン

公開日:2021年9月10日

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