新しい道

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大迫傑

最終更新日:2021年8月10日
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安定した実業団というレールを離れ、2015年に単身渡米。日本では誰も経験したことのないプロランナーというジャーニーへ。常識を疑い、オンリーワンの道を切り開く大迫傑の今に迫る。

日本を代表する長距離ランナーであり、マラソンの前日本記録保持者でもある大迫傑。華々しいキャリアや記録とともに注目を集めるのは、彼が独自に切り開いたそのキャリアパスだ。今までの日本の陸上界の常識にはなかった実業団を離れたプロランナーという選択。従来のやり方や陸上界のあり方に疑問を投げかけ、後進たちの環境づくりや競技自体の価値向上も目指す彼が描く未来とは?競技人生の中で最大の挑戦を控えた彼が語る今までとこれから。

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アメリカへ行くという日本の長距離界で今までにない選択をした理由を教えてください。

大迫傑:みんなサングラスをかけて、同じような服装をして、同じようにゴールする金太郎飴のようになるのが怖かったんです。そこに自分が思うスポーツ選手としてのかっこよさはなかったから。陸上を続ける理由として、有名になって成功したい、オンリーワンになりたいという気持ちがありました。日本にいても、自分の可能性が最大限活かされないなというのを感じたんです。それならば、一番身近なアメリカに挑戦してみようと思いました。当時、全く英語も喋れなかったので、アパートの借り方や銀行口座の開設の仕方など、走る以前に生活のことがわからず非常に苦労しました。でも、そうした大変な思いをしながら、世界のトップチームで練習することで、どうしたら自分が世界のトップにたどり着けるかという道筋がはっきりとわかりました。

「みんなと同じ金太郎飴のようになるのが怖かったんです」

-大迫傑

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大迫選手のコーチが大迫選手は世界中でだれよりもトレーニングと努力をしていると言っていましたが、そういうマインドセットでいられる理由はなんですか?

大迫傑:僕は、人の才能や可能性にそんなに差がないと思っています。だからこそ、たくさん走って、誰よりも競技に集中できる人が勝っていくのかなと。自分を特別だと思っていないからこそ、人より一歩踏み出さなきゃいけないっていう思いがあります。常に僕は一番ではなくて、二番、三番っていう立ち位置にいたからこそ、人よりも多くやって、長く続けなきゃいけないと思っていました。一歩一歩が遅かったとしても、それを長く続ければ、絶対人よりも先に行けると思っているので、そういうことは意識して競技を続けてきました。

「自分を特別だと思っていないからこそ、人より一歩踏み出さなきゃいけないっていう思いがあります」

-大迫傑

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マラソン挑戦から今に至るまでの流れを自身でどう振り返りますか?

大迫傑:2017年の初マラソンは3位という思った以上の結果で。それ以降の2回も3位に入賞して、自分自身何かマラソンをリスペクトしきれていなかった部分があるのかな。本当にもっとリスペクトしてやらなければと感じたのが、初めて棄権した東京マラソンでした。マラソンは、自然の中を走るしレースごとに環境も違う。それまではレースに対するシュミレーションをしていましたが、そうではなくて自然と接するように自分も溶け込んで向き合って走らなくてはいけないと意識するようになりました。マラソングランドチャンピオンシップ、その半年後の東京マラソンまでのプレッシャーはかなりあり、他人が台風の目になって襲いかかってくるのではと考えたこともありました。でもコーチから「嵐を怖がるんじゃなくて、自分が嵐になる」という言葉をもらって、事実的に僕が台風の目で、僕に主導権があるなと思えて気持ちが楽になりました。

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2020年をどのような思いで乗り越えましたか?今年の夏は大迫選手にとってどんな夏になりますか?

大迫傑:夏の大会が延びたことが最初は受け入れがたく、走りたくないと思ったこともありました。でも、スポーツ選手だけじゃなくて、いろんな人が大変な状況に置かれている今、僕らはその人たちに向けてどういうことを見せていけるのか。もし僕が諦めてしまったら、見てくれる人も自分が辛いことがあった時にくじけてしまうといったような責任も僕自身にあるとコーチに気づかされて、あと1年頑張ってみようと思えました。夏の大会は競技人生の中で最大のものになり、人生最大の瞬間であることは間違いないですし、それに対してその先何が起こるかわからないけど、頑張りたいなっていう思いだけですね。

「いろんな人が大変な状況に置かれている今、僕らはその人たちに向けてどういうことを見せていけるのか」

-大迫傑

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後進の選手のために考えていることやアドバイスがあれば教えてください。

大迫傑:30歳になりますし、自分の競技生活の残り時間や限界は多かれ少なかれ見えてくる現実があることを考えると、次に続く選手たちが僕を踏み台にして、さらに高みを目指せるような環境を作ってあげたいなと思ったんです。それは、本当に彼らのためでもあるし、回り回って、僕自身がやってきた競技の価値が上がることにもつながるので、すごく意味のあることだなと。今の選手に関しては、自分のヴィジョンが明確じゃなくて、そこに向けての道筋がはっきりしてない選手が多いかなと感じていて、ヴィジョンをちゃんと持てるような選手になってほしいなと思います。そのヴィジョンへの道筋がアメリカにあるのであれば、アメリカ行きをサポートしたいと思いますし、ケニアにあるのであれば、ケニアでサポートしたいなっと思っています」

「僕を踏み台にして、さらに高みを目指せるような環境を作ってあげたい」

-大迫傑

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公開日:2021年8月11日