バルキングとカッティング:押さえておきたいポイント

食事

体組成の変化は、運動能力向上のために調整する価値のあるパラメーターの1つだ。

最終更新日:2022年7月26日
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バルキングとカッティングの違いとは?

体重や体組成のわずかな変化は、多くのスポーツにおいて、そのパフォーマンスや持久力、また競技の階級に違いをもたらす。

たとえば、ボクシングの階級の多くはおよそ6ポンドごとに設定されているため、スーパーミドル級からライトヘビー級に変更する際には、わずか数ポンドの増量で階級を上げることができる。 レスリングや、MMAなどの格闘技、パワーリフティング、ボディビルディングなども同様だ。 特定の重量の目標がなくとも、体組成、つまり脂肪、骨、筋肉の割合が、水泳やサイクリングなどの運動における空気力学的側面に影響すると考えるアスリートもいる。

バルキングとカッティングの価値は、まさにここにある。 筋肉増強のステップであるバルキングを行うには、設定した期間内で、消費するよりも多くのカロリーを摂取し、高負荷ウェイトトレーニングと組み合わせる必要がある。 一方カッティングは、できる限り筋肉量を維持しながら、体脂肪を落とす目的でカロリーを減らすフェーズだ。

競技での長所を伸ばしたい場合や、スポーツやアクティビティでのパフォーマンスを高めることができるかどうか試してみたい場合は、体組成のバランスを変えてみるとよいだろう。

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これをスマート(かつ健康的)な方法で行うのに最適なアプローチという観点から見ると、バルキングとカッティングは、システムを構築しやすい。こう述べるのは、オハイオ州立大学ウェクスナーメディカルセンターのスポーツ栄養士、ケイシー・ヴァヴレック 氏だ。 これらは通常、ボディビルダーと連想される事柄だが、彼らの考え方は、あらゆるフィットネスでの取り組みに活用することができる。

ヴァヴレックはこう話す。「バルキングやカッティングは、何もボディビルダーだけのものではありません。 趣味でジムに通っている人も取り組むことができます。要は、カロリーの摂取量を調整しながら必要な栄養をしっかりと摂り、それぞれの目標に応じたエクササイズをするだけなのです。」

プロからのアドバイス:体重計の数値よりも、体脂肪率に注目

ボクシングやレスリングなどのスポーツでは、体重計の数値を基準に競技を行うが、日常のパフォーマンスを考えたときには体組成に注目するほうがよいと、ヴァヴレックは述べている。 つまり、単純に体重を増減させるのではなく、筋肉量を増加させ、体脂肪の割合を低下させることに注力するのがよいという。

その理由は、体重を早く落とそうとしてカロリーを減らすと、たしかに体重を減らすことはできるかもしれないが、必要な筋肉の質量まで落ちてしまうからだ。 こうなると、衰弱や疲労、パフォーマンスの低下、けがのリスク増加など、さまざまな問題の原因になるとヴァヴレックは指摘する。

さらに、リバウンドによって体重が再び増えると、筋肉ではなく脂肪が増えることがほとんどだ。 これにより、内臓脂肪(腹部の奥深くに蓄積する脂肪)の量が増加する可能性があり、それが原因となって炎症の悪化、インスリン抵抗性や心血管系の問題を引き起こす恐れがあると、『Eat to Beat Disease: The New Science of How Your Body Can Heal Itself』の著者であるウィリアム・リー氏は述べている。

「特に急激なカロリーの減少の間に起こるような体重の変動は、たとえ体重の減量を達成できたとしても、非常に問題があります」と、彼は説明する。 「それよりも、計画的な栄養摂取と筋力トレーニングなどのエクササイズによる、筋肉の増強に注力することが重要です。 これにより、よりバランスの取れた体組成を作ることができるのです。」

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バルキングとカッティングの違いとは?

正しいバルキングの方法

増量の際の主な目標は、余剰カロリーを消費しつつ、筋肉を増強することであることを忘れてはならない。 ヴァヴレックは、必要なカロリーに1日当たり300~500カロリーを追加して余剰カロリーを確保するとともに、筋力トレーニングを強化して、筋肉の増強量を最大限に引き上げるよう推奨している。 一般的に毎週約200~900gずつと、徐々に増量していくのが望ましいとのことだ。

カロリーは、筋力トレーニングで筋肉への負荷を増やす際のエネルギー、そしてその後のリカバリーの源となるものだ。 運動に対してカロリーが不足していると、逆にトレーニング中に脂肪や筋肉を分解してしまう危険がある。 また、筋力トレーニングが不足すると、カロリーをただ余分に摂取し、燃焼しないことになってしまう。 バルキングでは、健康的な食料源からカロリーを多めに摂取すると同時に、筋肉を成長させるのに十分な負荷を得られるトレーニングを行うことが重要であることを覚えておこう。

さらに、ヴァヴレックはこう推奨している。「もう1つバルキングのポイントとなるのは、筋肉の増強を支えるのに十分なタンパク質を摂取することです。」 これに関しては、体重1kgあたり、1.6~2.2gのタンパク質摂取を目標にするとよい。 もしこれらのルールをすべて守っていても成果が見られない場合は、毎週のカロリーを、およそ100~200カロリーずつゆるやかに増やしていくことをヴァヴレックは勧めている。

「よくある失敗としては、増量の際にカロリーを急に増やしすぎて、体脂肪が過度に増えてしまうことです」と彼女は話す。 「こうなると、動きに鈍さを感じたり、運動能力が低下したりすることがあります。 それに加え、飽和脂肪酸や砂糖といった、あまり健康的でない食品から余剰なカロリーを摂取すると、コレステロールや血糖値が増加し、慢性疾患のリスクが高くなってしまいます。」

では、適切に増量するには、どんなものを食べればよいか? スポーツ栄養学を専門とする登録栄養士のアマンダ・コストロ・ミラー氏は、不飽和脂肪酸を豊富に含む、栄養価の高い食品が理想的であると述べている。 食品の例は次の通り。

· ナッツやシード類

· 脂肪の多い魚

· 全粒穀物

· 健康的な脂質

· でんぷんを多く含む野菜

· 赤身の肉

増量に効果のある、健康的で栄養豊富な食品の例として、サツマイモ、サーモン、アボカド、玄米、鶏肉などをミラーは挙げる。

「これらの食品は、栄養価も高く、カロリーも豊富です」ミラーはこう続ける。 「また、全体的な健康を支える、さまざまなビタミンやミネラル、食物繊維も摂ることができます。」

健康的なカッティングの行い方

当然のことながら、カッティングの際には、体脂肪を落とす目的でカロリー不足の状態を作る一方で、筋肉量を可能なかぎり維持する必要があるとヴァヴレックは話す。 これを行うには、カロリーの摂取を、毎日のカロリーの消費量よりも300~500カロリー少なくすることが推奨されるという。

「筋肉量を維持するには、タンパク質摂取量を高めに維持し、タンパク質を含む間食などから、摂取量を1日にわたって分散させることが推奨されます」と彼女は話す。 増量と同様、減量もゆるやかに進め、毎週約200-~900gずつの減量を目標とにするとよい。 取り組む運動も変える必要があると、ヴァヴレックは付け加える。 筋力トレーニングよりも、有酸素運動を増やすことで、最も効果的に減量できるという。

よくある失敗としては、これもバルキングと似ているが、この場合はカロリーを摂りすぎるのとは反対に、摂取量を減らしすぎることだという。

「減量を目的としてカロリーの摂取を減らしすぎて、カロリー不足に陥ることがよくあります」ヴァヴレックはこう話す。 「これは、筋力低下だけでなく、骨密度の減少にもつながります。 カロリー不足が激しいと、疲労や空腹を感じたり、睡眠の質が低下したりするほか、集中力や気力にマイナスの影響を及ぼすことがあるのです。」

エネルギーの維持は、減量において最も難しいことの1つだと、ミラーは付け加える。 この理由から、減量では、エネルギーを維持しながら体脂肪を落とせるよう、さまざまな食事や運動量を試してみることが推奨される。 アマンダによると、フルーツや野菜、低脂肪の乳製品や豆類など、健康的な炭水化物が有効だという。

関連記事:ワークアウトの前後に摂るべき食品は?

「旬の食材は特に有効で、低カロリーなのに微量栄養素や抗酸化物質、食物繊維が豊富です」と話すのはミラー。 「増量と同様、カロリーだけではなく、栄養価の高さにも注目するとよいでしょう。」

初めてバルキングやカッティングに取り組む場合は、安全に始められるよう、かかりつけ医や登録栄養士に相談することを検討しよう。

結論

バルキングかカッティングにかかわらず、効果のあったことや、そうでなかったことの記録を残しておくのも有効だと、ミラーは付け加える。 また、体脂肪率と体重を表示してくれる体重計を持っておくのもよいだろう。こうした機器は、病院の診察室やジムにあるような、専門の計測器ほどの精度はない点に注意が必要だ。ただし、進捗を大まかに知ることはできる。

いろいろと試してみたにもかかわらずあまり成果を感じられないという場合は、スポーツ栄養学を専門とする栄養士にアドバイスを求めることを検討しよう。 専門の栄養士であれば、カロリーの数値や主要栄養素(マクロ栄養素)の誤りを指摘し、計画の見直しをサポートしてくれるはずだ。

バルキングやカッティングの取り組みは、試してみる価値のある、トレーニングの中のパラメーターの1つとして捉えるのが賢明だろう。 最も重要なことは、減量中でも、ワークアウトをしながら、十分なカロリーを摂取するよう努めること。こうすることで、けがを防ぎ、エネルギーを維持することができる。

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執筆:エリザベス・ミラード

バルキングとカッティングの違いとは?

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公開日:2022年3月25日

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