レース前の食事方法:専門家からのアドバイス

食事

パフォーマンスを最大限に発揮するためには、レースの前に燃料補給が必要だ。しかし、何を食卓に並べるべきだろうか? この疑問について、公認スポーツ管理栄養士であり、Nike Runningのグローバルヘッドコーチを務めるクリス・ベネットの意見を紹介しよう。

最終更新日:2022年7月27日
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栄養士が伝授するレースを走る前の食事のヒント

初めての5Kランニングに挑戦する人であっても、これからまた増えるマラソンの完走メダルのためにスペースを空けておこうと考えている人であっても、大会に向けて準備を進める大半のランナーには共通の疑問がある。それは、「レースで最高のパフォーマンスを発揮するために、何を食べるべきか?」というものだ。

いきなり結論を言うと、それは、何が自分に適しているかによって変わってくる。 とはいえ、どんな食事がエネルギー源となり、スタートラインから飛び出す準備を支えてくれるのかを見極めるための、一般的なガイドラインやヒントは存在する。

ここでは、Nike Runningのグローバルヘッドコーチであるクリス・ベネットや専門家が考える、知っておきたい重要な戦略を紹介する。

たっぷりの炭水化物と適度なタンパク質

持久力が試される5K以上のレースでは、炭水化物が主なエネルギー源になる。こう言うのは、オハイオ州立大学ウェクスナー医療センター所属で、スポーツ栄養学を専門とする管理栄養士のカシー・ヴァヴレックだ。

「炭水化物はすばやくエネルギーになるため、体は炭水化物を運動のための燃料としてすぐに使用できます」とヴァヴレックは述べる。 「ですから、ランニング前の食事は大部分を炭水化物にして、そこに適度なタンパク質と少しの脂肪や食物繊維を足すべきです。こうした追加の栄養素は消化が遅いため、消化自体を遅くさせることができます」

ヴァヴレックは、次のような食品を試しに食べて、何が自分に最も適しているかを確認することをすすめている。

·バターを挟んだベーグルまたはピーナッツバターとバナナを挟んだベーグル

·フルーツスムージー

·ピーナッツバターとジャムのサンドイッチに、プレッツェルまたはフルーツ

·ナッツバターを添えた餅とカップ1杯のベリー

·固ゆで卵と、アーモンドバターを添えたバナナ

バナナとナッツバターが提案の中に多く登場していることに気が付いたと思うが、そこにはそれ相応の理由がある。 食物繊維が少なく炭水化物を豊富に含むバナナは、カリウムとビタミンB6の大きな供給源でもある。 研究によると、バナナはエネルギーをすばやく供給するだけでなく、運動に起因する炎症を和らげるのにも役立つ。

ナッツバターは適度なタンパク質と脂肪のカテゴリーに入る。エネルギーの放出がゆっくりであるため、ベーグルやバナナといった食物から得られる爆発的なエネルギーとの間でバランスを取れるとヴァヴレックは述べている。

栄養士が伝授するレースを走る前の食事のヒント

レース前の食事は、食べるタイミングも重要

マラソンのような早朝から始まるイベントの場合は、スタートの数時間前に炭水化物を詰め込むのではなく、前日の夕食を炭水化物たっぷりする方が無難であるとダナ・エリス・ハンネス(博士、 管理栄養士、UCLAメディカルセンターのシニア栄養士、『Recipe for Survival』の著者)は語る。

レース前日の夜に炭水化物を摂ることにした場合は、レース当日の朝食にバナナとひとつかみのナッツのような軽い食事を選択するようにしよう。これで炭水化物からは即効性の刺激が得られ、ナッツの少量のタンパク質と脂肪がエネルギーの持続を助けてくれるとハンネスは付け加える。

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ハンネスによると、5Kの短いレースであれば、炭水化物の摂取量にそこまで注目する必要はない。 その場合は、レースの前にきちんと食べることを心がけよう。走る前に消化の時間が取れるように、通常は2時間前の食事がベストだ。

一般的に夜に開催されるレースや陸上競技大会の場合は、スタートラインに立つ前にボリュームのある夕食を食べておくべきだと思うかもしれない。しかし、それでは満腹感を感じすぎてしまう可能性があると、高校でクロスカントリーのコーチを務めるスポーツ栄養学の専門家兼管理栄養士のジュリア・デニソンは言う。

「夜間や午後にレースに出場するときは、1日を通していつもどおりの食事を取ることが欠かせません」とデニソンはすすめている。 「例えば、午後7時からレースがある場合でも、1日の中でしっかりと朝食、昼食、夕食、それに間食を食べたくなるものです」

デニソンは、夜間のレースの約3~4時間前に夕食を取り、1時間から30分前に炭水化物が豊富な少なめの食事または軽食を取ることをすすめている。

デニソンがコーチを務める高校のアスリートたちのお気に入りの儀式は、レース前日の夜のパスタパーティーだ。 デニソンは、この儀式が彼らのパフォーマンスを実際に向上させるのかは疑問視しているものの、この儀式が持つチームの絆作りという側面が、レース前の自信を後押しする要因になっていると考えている。

このことは、いつ何を食べるかだけでなく、誰と食べるかも、ときには重要であることを思い出させてくれる。 ほぼ全員とまではいかなくとも多くのランナーは、レース前の儀式を作り出している。例えば、身に付けるウェアやシューレースの結び方だったり、レース直前まで同じ曲を聞き続けることなどだ。 大きなレースの前日に仲間のランナーと食事をともにすることも、同じように一貫性や自信を与えてくれるとデニソンは語る。

どのエネルギーが自分に効果的かを考えて楽しむ

より正確に言うならば、大きなレースの直前だけでなく、トレーニングサイクル中も食べる内容を選ぶことを楽しむということだ。 ハーフマラソン、マラソン、ウルトラマラソンといった長距離レースへの挑戦を目指しているのであれば、少なくとも週1回はレースの準備に長距離ランを組み込んでいるだろうと、ナイキプラスRun Club、グローバルヘッドコーチのクリス・ベネットは語る。 大半の人にとっては、これが、食べ物や飲み物のチョイスを改善する最高のタイミングとなる。走る前と記録を取りながら走っている間の両方で、何が効果があって、何が効果がないのかを検討できるからだ。

特にカフェインの効果を知るために最適であることをベネットは付け加えている。 適度なカフェインの摂取は、持久力の必要な運動を行っているときに疲労に打ち勝つ助けになることが証明されているが、自分に有効なカフェインの量(およびタイプ)を見つけるためには試行錯誤が必要であるとベネットは指摘する。例えば、走る直前にカフェイン入りのチューイングガムを噛むと神経質になり過ぎてしまうが、同水準のカフェインを1杯のコーヒーで摂取しても同じようなマイナスの影響はなく、より活力を高められる場合すらある。

さらに、レースの1時間以上前に食事を取っていれば、走る直前には何も口にしないことが最適なチョイスであることすらある、とベネットは述べている。 つまり、スタートラインで摂るエネルギー補給のゼリー飲料やバーを止めてみるというのが、彼からのアドバイスだ。 こうした食べ物は、手早く食べられる燃料として作られている。 これらをレース中のエネルギー源として頼りにするランナーもいるが、こうした食品はスタートダッシュの後押しとしては理想的な選択肢とは言えないとベネットは述べている。 5Kや10Kのような短い距離のランニングの場合は、それが顕著に現れる。

レース前の食事では、距離ではなく時間に着目

レース当日は筋肉への炭水化物の安定供給が必要ではあるが、42kmを走るときほどの燃料は5kmのランには必要ないだろう。こう話すのは、認定管理栄養士でミネソタ州のノースウェスタン健康科学大学、College of Health and Wellnessの助教兼栄養学チェアであるクリスチャン・マイヤージャックスだ。

最大の要素は距離ではないとマイヤージャックスは示唆する。 それは時間だ。

「十分に栄養を摂取した人は、平均で約1,800カロリーまたは90~120分間に相当する炭水化物を、筋肉や肝臓に蓄えることができる」とマイヤージャックスは述べる。 「60分以下のランニングを行うアスリートであれば、消化の状態を最適にするために最低でもレースの2時間前に食事を摂ると良い。150~250gの炭水化物が摂れるバランスの良い食事であれば、それ以外に炭水化物を追加摂取する必要はない」

ハーフマラソンやマラソンのように60分以上走る場合は、最初の1時間を経過した時点から1時間ごとに30~60g程度の炭水化物が追加で必要になると、マイヤージャックスは語る。 そこで活躍するのがゼリー飲料やバーだ。だが、やはりここでもテストが必要だ。

「レース中の炭水化物摂取のタイミングを見極めるには、練習が肝心です」とマイヤージャックスは語る。 「ランナーは栄養補給を行う最高のタイミングを把握し、レース中は炭水化物が足りている状態を保つ必要があります」

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栄養士が伝授するレースを走る前の食事のヒント

レース当日はブレずに実行

どのようなレースに参加するにしても、何週間も前からできる限りの準備をしておけば、レース前にどういった食事や軽食をいつ食べるべきかについて、確固とした考えが持てるようになるとベネットは話す。 もしかしたら炭水化物やコーヒーを追加の燃料として少し口にしたい欲望にかられるかもしれない。しかし、大抵の場合、もともとの計画に忠実に進める方が遥かに良いとベネットは指摘する。

「自分の体に合わせてカスタマイズした検証済みの情報があれば、朝からしっかり体をコントロールできているという気持ちが強まり、コースに臨む際の自信が増します」とベネットは語る。 「肉体的には、ベストパフォーマンスを発揮できるだけの理想的なエネルギーを筋肉に与えることができます。さらに精神的には、目標の突破に向かって何マイルも進むうえで必要な栄養が体内に入っていると確信できます」

レースまたは通常のランニングの前に口にする食べ物に関するヒントとして、さらに「ワークアウトの前後に食べるべき食品は?」も忘れずチェックしよう。 さらに、Nike Training Clubアプリをダウンロードして、専門家が支援する栄養に関するヒントを確認しよう。



執筆:エリザベス・ミラード

栄養士が伝授するレースを走る前の食事のヒント

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公開日:2022年3月14日

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