食後のランニングにはどのくらいの時間を空けるべき?

栄養

管理栄養士が、ジョギングの前に栄養の摂取が欠かせない理由と、腹痛を回避する対策について解説する。

最終更新日:2024年1月17日
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食後のランニングにはどのくらいの時間を空けるべきか?

何も食べずにランニングに出かけると、ワークアウトにマイナスの影響が出るだけでなく、ランニングを思う存分楽しめなくなる。 その理由は、 空腹でのランニングが、疲労やめまい、ふらつきといった望ましくない症状を引き起こす可能性があるからだ。

では、食事とランニングの間にどのくらいの時間を空けるべきだろうか? また、朝走るのが好きなランナーは、時間がない場合でも、ランの前に食事をしたほうがよいのだろうか? とにかく、誰しも胃の不調に対処しなければならない事態は避けたいだろう。

食後、ランニングシューズを履くタイミングは、食事の量や内容、またランの強度や長さなどのさまざまな要因によって異なる。

食事とランニングの間に空けるべき時間

ランニングに出かけるまでどのくらいの時間を空けるべきかは、摂取した食べ物の種類と量による。

脂質や食物繊維を多く含む食べ物は、消化に時間がかかるため、ランナーの腹痛の原因になると言われる。 食物繊維は炭水化物の一種であり、人間の体では消化吸収できない。 食物繊維は健康全般に欠かせない栄養素だが、食物繊維が豊富な食べ物は、そうでない食べ物より消化に多くの時間がかかる。 だから、ジョギングの前に食物繊維が豊富な食べ物を摂り、まだ消化されようとしている段階でランニングに飛び出すと、胃けいれんや膨満感を引き起こしかねないのだ。

食物繊維を多く含む食事と同じく、脂質の多い食事も胃排出遅延につながる。つまり、食べ物が消化管を通過するのに時間がかかるということだ。 ランニング中に胃の中に食べ物がとどまっているような不快感が生じるかもしれない。

チーズとオリーブオイルをトッピングした大量のサラダや、ベリーとグラノーラを入れたヨーグルトのような、食物繊維や健康的な脂質を含む食事を楽しみたい場合は、少なくとも2~3時間置いてからランニングに出かけるのが賢明だ。 そうすれば、摂取した食べ物が、ある程度胃を通過した状態になる。

少量のナッツとベリーといった軽食程度の食べ物であれば、消化にそれほど時間がかからない。確実な消化時間が示されているわけではないが、食物繊維や健康的な脂質を含み、優れた栄養源になる軽食を摂った後、30~60分経ってからランニングに出かけるようにすると、胃腸の調子を崩すリスクを減らせる。

忙しいときに、食後60分以内にランニングに出かけるなら、用意しやすく消化の早い食品を選ぶのがベスト。トースト1枚、バナナ、少量のクラッカーやアップルソースといった、単炭水化物がおすすめだ。 こういった食品はどれも食物繊維が少なく、脂質やタンパク質を控えれば、消化が早い。

ただし、長距離ランを予定している場合は、もっとたくさん食べて栄養補給しておいたほうがいいので、走る前の時間に余裕を持つようにしよう。 学術誌『The International Society of Sports Nutrition』に掲載された2017年のポジションペーパーによると、60分以上のランニングを行う場合、軽食では栄養が不十分で、ランの途中に食べ物を摂取しなければならなくなる可能性が高い。

とは言うものの、軽食であれたっぷりとした食事であれ、食後、ランニングに出かけるまでに空けるべき時間は一人ひとり異なる。 軽食を食べた後すぐに出発しても問題のないランナーもいるだろうが、20~30分待つ必要があるランナーもいるだろう。

ランニングの前に摂取するのに最適な食べ物を見極めるため、管理栄養士など、健康の専門家に相談してみてもいい。

(関連記事:専門家が推奨する、ワークアウト前後の食事方法

食後のランニングにはどのくらいの時間を空けるべきか?

食後すぐにランニングをするとどうなる?

食事とランニングの間に空けるべき時間が一人ひとり異なるのであれば、自分の体にとって最適な時間を見いだす必要があるということになる。

ランニングの初心者はなおさら、軽食や食事を摂った後、どのくらいの時間を空けるべきか試したほうがよい。 しかし、試す間は胃腸に多少不快感をきたすことがある。 満腹状態でランニングを行うときに生じるおそれのある問題の一つは、胃腸障害。吐き気やガスの発生、膨満感、けいれんなど、さまざまな症状を引き起こす可能性がある。

食後すぐのランニングを控えるべきもう一つの理由は、血流に関係するものだ。 ランニング中は、酸素を届け、運動のペースを保つために、脚の主要な筋肉へと血液を運ばなければならない。 一方、食事中および食後は、消化を助けるために血液が消化管に流れる。 ランニングと消化は競合する活動であり、同時に発生するとうまく対処できないのだ。

食後のランニングにはどのくらいの時間を空けるべきか?

ランニングを行う時間帯別のおすすめの食べ物

1. 朝

空腹状態でのランニングの有効性に関する研究では、賛否両論の結果が出ている。 また、空腹状態でのランニングは減量に役立つ可能性はあるが(減量が目標である場合)、ランニングのパフォーマンス向上の助けにはならないかもしれない。

起床後すぐに道路やトラック、トレイルを走りたいのなら、前日の夕食にキヌアやサツマイモなどの複合炭水化物、タンパク質、健康的な脂質を含むものを摂取するといいだろう。 栄養豊富な夕食を摂っておけば、朝のランニングに必要な栄養素をある程度貯蔵できる。

空腹ではランニングの調子が出ず、走る時間が1時間未満の場合は、果物一切れ、または少量のシリアルといった軽食を摂ると、ランニングに必要な栄養を賄える。 食後20分以上時間を置けば、胃腸障害が起きる可能性も低くなる。

(関連記事:レース前の食事方法

2. 午後

午後のランニングの前に何を食べるべきかは、昼食の内容とタイミングによる。 脂質、タンパク質、炭水化物を含む食事を摂った後は、ランニングに出かけるまで最低2時間は空けたほうがいいだろう。 ただし、昼食後4時間以上経ったタイミングでランニングに出かける場合は、少量のクラッカーやプレッツェル、また果物一切れといった食べ物で栄養を補給する必要があるかもしれない。

3. 夕方

夕食前にランニングを行う場合は、 ランニングの1時間ほど前に、少量または多すぎない量の軽食を摂ることをおすすめする。 たとえば、七面鳥やピーナツバターとジャムのサンドイッチを半切れ、少量のフルーツ入りヨーグルト、フムスとピタパンなどが理想的。 短時間のランニングなら、午後のランニング向けにおすすめした食べ物(クラッカー、プレッツェル、果物)のような消化しやすい炭水化物で十分だろう。

結論

結局のところ、食後、ランニングに出かけるまでに空けるべき時間を見いだすには、個人の相当な試行錯誤が必要ということになる。 可能であれば、ランニングコーチや管理栄養士のいずれかあるいは両者に相談し、サポートしてもらおう。 ランの結果に加えてランニング前の食事や軽食も記録すると、ランニング前の栄養補給計画に役立つはずだ。

文:シドニー・グリーン(理学修士、 管理栄養士)

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公開日:2024年1月9日

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