人生が一変する怪我をして、喪失の中で強さを見出したプロゴルファー

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カルロス・ブラウンのキャリアは軌道に乗り始めていた。しかし、ある事故がきっかけで自分の人生とゲームへの情熱を考え直すことになる。

最終更新日:2021年6月16日

「不可能を可能に」は、スポーツの中に個人としての意味を見出そうと努力するアスリートたちのシリーズ。

ゴルフをプレーしたことがある人なら、それがどれだけ予測不可能なスポーツか知っているだろう。気まぐれな風が、着地直前にボールの方向を変えてしまう。あらぬ方向へバウンドしたボールが森の中へ消えていく。たった一本の枝に軌道を邪魔されたボールが、グリーンのロングサイドぎりぎりに着地する。神に嫌われたのか、ボールがゆっくり池に転がり落ちて、思わず罵り言葉を口走る。ゴルフは、いろんな意味で気まぐれな人生そのものだ。テキサス州ダラス出身のカルロス・ブラウンは、受賞歴のあるゴルフコーチ。ゴルフの予測不可能性を知り尽くしている。かつてはプロゴルファーとして立っていた9番ホールでグリーンを読む彼は、そもそもこうして立っていられるという事実に心の底から感謝している。

事の起こりは、2016年のレッスン中。ゴルフカートから降りるときに、スプリンクラーのヘッドに激しい勢いで着地し、足首をひどく捻挫してしまったのだ。大した怪我ではないはずだったが、患部が感染症に冒され、緊急救命室に運び込まれた。手術が終わって目を覚ましたとき、彼の左下腿は切断されていた。

プロゴルファーのカルロス・ブラウンが、人生を変える大怪我から見出した本当の力
プロゴルファーのカルロス・ブラウンが、人生を変える大怪我から見出した本当の力
プロゴルファーのカルロス・ブラウンが、人生を変える大怪我から見出した本当の力
プロゴルファーのカルロス・ブラウンが、人生を変える大怪我から見出した本当の力

白人が優勢なゴルフ界。黒人コーチであるカルロスは、その中で常に少数派だった。脚を切断した黒人のプロゴルファーともなればなおさらだ。「私は、自分自身より大きな意味を持つグループを象徴しています。自分より大きな意味を持つ2つのグループです」と、カルロスは言う。「私には近道はないし、ごまかしもできません」しかし、彼はこれらすべてを乗り越えて、希望の兆しを見つけられると確信していた。

「ここにいるのが好きで、ゴルフが好きで、ゴルフを仕事にしていることが楽しいのです...」

脚が切断されてから、あらゆることが急に難しくなった。服を着ること、ティーボックスまで歩くこと、パットの後に身をかがめてボールを拾うこと。しかしカルロスは、ゴルフを教える仕事を辞めようと考えたことはなかった。それどころか、元の生活に戻る過程で彼の精神は解放されていった。「もう一度ゴルフをプレーして、もう一度ゴルフを教えることは確信していました」と、彼は言う。「でも、そのプロセスが自分を変えていくとは思ってもいませんでした」退院したカルロスは、以前は簡単にできたことも、すべて学び直さなければならなかった。そうして彼は、怪我を否定的に捉えて嘆くのではなく、楽観的に捉えて感謝するきっかけが与えられたと考えるようになっていった。「それは、自分がここにいるのが好きで、ゴルフが好きで、ゴルフを仕事にしていることが楽しくて、ゴルフをプレーするのが大好きだからです」

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プロゴルファーのカルロス・ブラウンが、人生を変える大怪我から見出した本当の力

グリーン上のカルロスは、パーを狙って8フィートのパットに集中している。彼の義足は、ゴルファーがゴルファーのために設計したもの。足の下のグリーンを読むだけでなく、グリーンを感じ取ることもできるのだと言う。「ほんのわずかでも、自分の位置がずれていればわかります。正確にわかるので、とても役に立っています」という彼の言葉は、彼の新しい人生観を表している。他人からは損失に見えるものも、カルロスにとってはプラスだ。彼は自分のボールを見下ろして立ち、完璧なストロークで打ったボールが、ゆっくりとホールに吸い込まれるのを見守る。

「もし脚を切断した子どもが私を見たら、きっと『僕もゴルフのプロになれるんだ。僕もゴルフをプレーできるんだ』と言うでしょう」

カルロスは、人生とはゴルフコースのように、コントロールできないものだと考えている。彼はよく「コントロール可能なものはコントロールすべき」という格言を口にする。彼は誰かの希望の光になることを目指したつもりはないだろう。しかし、コントロールできない事態が発生したときに、彼はすばやく新しい現実に対応する必要があった。それができたのは、ひとえに自分を信じていたから。現実的に考え、すぐに新しい状況を大局的に捉えることができたのだ。また、サポートシステム、つまり手術が終わって目が覚めたときに側にいてくれた人たちの力も大きかったという。彼は、当時の自分と同じ状況に置かれた人たちのために、自分がそのサポートシステムになれればと考えている。「もし脚を切断した子どもが私を見たら、きっと彼は『僕もゴルフのプロになれるんだ。僕もゴルフをプレーできるんだ』と言うでしょう」

自分がどのようにして精神的および肉体的な困難を克服して、愛するゴルフと人生を新たな視点で捉えるようになったかを語るカルロス。上の動画で彼のストーリーをチェックしよう。

プロゴルファーのカルロス・ブラウンが、人生を変える大怪我から見出した本当の力
プロゴルファーのカルロス・ブラウンが、人生を変える大怪我から見出した本当の力

文章:ニコラウス・スガイ
写真:エリ・ダースト
動画:シャーン・シャルマ

報告:2020年9月

公開日:2021年6月16日

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