変形性関節症がある場合の運動方法についてエキスパートが解説

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関節炎がある人が取り組める運動を医療専門家が紹介。これらの運動が症状の軽減に役立つ理由もチェックしよう。

最終更新日:2023年4月7日
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変形性関節症がある場合の運動方法についてエキスパートが解説

関節炎になるというのは、決して珍しいことではない。 変形性関節症の患者数は、2019年には世界で5億2,781万人にも上ったという。主に症状が出る部位は、手、腰、首、膝、股関節、足だ。 痛み、こわばり、腫れといった症状が現れ、あらゆる動きが不自由になり、エクササイズはとりわけ困難になる。

それでも、医師の許可があれば運動は可能だし、ここでお伝えする理学療法士や整形外科医の説明にあるように、運動するべきだ。 関節炎の中でも最も一般的な変形性関節症になった場合に、ワークアウトでひと汗流すためのヒントをチェックしよう。

関節炎に対処するうえでエクササイズに重点を置くべき理由

運動は誰にとっても重要で、変形性関節症に悩む人には特に欠かせないと話すのは、ポール・ナスリ(理学療法博士、 認定整形徒手療法士)。 エクササイズによって栄養豊富な滑液の循環が促され、骨同士の動きが滑らかになると説明する。

関節内の軟骨組織には血液は供給されないため、運動は関節に必要な栄養素を届ける唯一の手段になると、英国を拠点とする整形外科医で教授の ポール・Y・F・リーは語る。

また、米国理学療法士協会(American Physical Therapy Association)で広報を担当する理学療法博士、モーラ・ダリー・イバーセンはこう話す。「関節炎のある人も痛みを悪化させることなく運動できることと、習慣的な運動によって関節炎の痛みを緩和できることが研究で示されています

関節炎がある場合のエクササイズのポイントは 最初に急がないこと

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エクササイズが初めての人、もしくはエクササイズを再開する人は、徐々に進めてほしいと、インディアナ大学公衆衛生大学院運動学臨床助教授、バネッサ・カーチャーは言う。

「関節炎があるということは、運動によって関節に痛みが出やすかったり、ワークアウト後の回復に時間がかかったりする可能性があるということです」と説明するのは、 ハーバード大学医学大学院整形外科学助教授のミホ・J・タナカ医学博士だ。

「運動レベルを急に上げてしまうと、体が順応する時間が足りなくなります。これが原因で、関節炎の患者さんが関節に痛みを引き起こすことがよくあります」

5~10分のエクササイズから始めて、1日に20~30分まで増やしていくよう、カーチャーが勧める理由はここにある。 目標は、中程度の負荷の運動を週に150分実施することだ。

重点を置くべきエクササイズとは

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持久力より筋力の強化を重視するよう、リーはアドバイスする。 筋力や筋肉量が向上すると、筋肉が衝撃を吸収するようになるため、関節への負担が減少することが、多くの研究で示されているそうだ。

靭帯が安定すると関節への力の配分がより均等になるので、バランスを向上させるエクササイズも大事だと、リーは話す。

イバーセンによると、筋肉のこわばりや可動域の制限によって不安定な状態に陥るリスクが高まるとのこと。 「太極拳やヨガのようなエクササイズは、筋力、柔軟性、バランス、コーディネーションをすべて強化できます」と語る。

タナカは、一般的には関節に負荷を加えずに筋力を強化できるエクササイズを選ぶといいと話す。 サイクリング、エリプティカルマシンの使用、ヨガやピラティス、ウォーキング、水泳、ウォーターエアロビクスのクラスなど、負荷の低いアクティビティを検討してみよう。

「水は重力を最小限にして体重を支えてくれるので、水中では関節にかかる力が減少します」とカーチャーは言う。

言うまでもないが、新しいエクササイズを試す際は、事前に医師や理学療法士、認定パーソナルトレーナーに相談することをおすすめする。

(関連記事:水泳のメリットとは?

関節炎がある場合に控えるべきエクササイズ

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通常、ランニングやジャンプといった、関節に過剰な負荷をかけるおそれのある高負荷のアクティビティは制限したほうがいいと、ナスリは言う。

それ以外の運動については、体の声を聴き、どの関節に痛みが出るのかを考慮しよう。 ウェイトトレーニングをするとき、膝に関節炎があるならレッグエクステンションマシンは使わないほうがいいだろうと、 北米関節鏡学会会員である整形外科医、ジェローム・イナドは話す。 膝蓋大腿関節に過剰な負荷がかかり、関節炎の痛みが悪化するおそれがあるため、座った姿勢で使うレッグプレスマシンを代わりに使用するようアドバイスする。

股関節や膝に炎症がある場合は、深いスクワットやランジは避けてほしいと、ノースウェスタン大学ファインバーグ医学院、整形外科学・スポーツ医学部所属のルーカス・バクラー医師は述べている。

「一般的に、可動域の限界まで関節を動かさなければならないような運動は避けたほうが無難です。 関節の構造に大きな損傷を与える可能性は低いですが、炎症や症状が悪化するおそれがあります」

肩や肘が炎症を起こしている場合は、ベンチプレスやダンベルフライは避け、代わりにプッシュアップやディップスを取り入れることをイナドは推奨する。

(関連記事:プッシュアップはどの筋肉に効くか?

注意が必要な痛み

エクササイズで違和感がある程度生じるのは異常ではなく、想定範囲だと認識することが重要。そう語るのは、 公衆衛生学修士号を持つ整形外科医、ケリー・K・ミドルトンだ。

ただし、良い痛みと悪い痛みの違いは知っておく必要がある。 良い痛み(違和感)は、筋肉疲労やエクササイズ完了後の達成感などから生まれる感覚だと、ミドルトンは説明する。 一方、悪い痛みは、鋭い痛みや走るような痛みで、一か所に発生する。 激しい痛みを感じたら、それは重症化の兆候かもしれないので、エクササイズは中止するべきだと彼女は指摘する。

エクササイズ後に様子を見て、痛みが続くようであれば医師に相談してほしいと、ナスリは話す。

エクササイズを調整する方法

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認定パーソナルトレーナーや理学療法士のような専門家に相談しながらトレーニングできると心強い。 一般的には、痛みがなくなるまでは可動域を小さくしてほしいと、イナドはアドバイスする。 「可動域を狭めてもターゲットにする筋肉への効果はあります」

エクササイズをアレンジするもう一つの方法は、ウェイトを軽くするか、1セットの回数を減らすことだと、ナスリは言う。

ミドルトンは、関節に痛みが出ないよう、衝撃を吸収するマットを使用することをすすめる。 「マットを使うことで、関節への負荷を減らしつつ、効果的にワークアウトができます」

ストレッチが重要である理由

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「ストレッチは、関節炎のある人が関節の障害やこわばりの悪化を防ぐために欠かせない運動です」とミドルトン。

関節炎のある成人の多くは関節の可動域に制限があるため、水泳や有酸素運動に取り組む前にストレッチをすれば、フォームも改善し、けがのリスクが減ると、イバーセンは話す。

ミドルトンは、アームサークルやレッグスイングのような動的ストレッチをウォームアップに取り入れてみることをすすめている。 エクササイズ後のストレッチも重要だ。 ハムストリングやふくらはぎのストレッチなどの静的ストレッチでクールダウンし、痛みを予防するといいと、彼女はアドバイスする。

静的ストレッチでは、痛みを感じずに最大限伸ばせる範囲で行うことをイナドはすすめ、 弾みをつけずに各姿勢を10~20秒キープするといいと付け加える。

(関連記事:エキスパートが教える、日常的にストレッチを行う5つのメリット

結論

エクササイズは健康をサポートするためのもの。症状を悪化させるようではいけない。

カーチャーはこう話す。「変形性関節症に悩む人は、体を動かすことで、関節炎を悪化させずに心血管系の健康や筋力を向上できます。 運動は、関節周辺の筋力の強化、骨強度の維持、関節の動きのサポート、身体機能の改善に取り組む最善の手段の一つと言えます」

繰り返しになるが、エクササイズの習慣を計画するにあたり、医師や理学療法士に相談することをお忘れなく。 それから、気長に構えること。自分に合う対処法を見つけるまでに、多少は試行錯誤を重ねる必要があるかもしれない。

文:ディナ・チェイニー

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公開日:2023年3月30日

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