ランニングに最適なコンプレッションソックスの選び方
購入ガイド
コンプレッションソックスは、血行を良くし、腫れやむくみを防いでくれる。 ここでは、自分に適したコンプレッションソックスの見つけ方を紹介しよう。
長距離ランを終えて帰宅するときの気分は格別だ。 この気分は「ランナーズハイ」と呼ばれることもある。気分を落ち着かせる内因性カンナビノイドの血中濃度が上昇するために起きる現象だ。 しかし、長距離ランで足やふくらはぎ、太ももがむくんだり、足先からふくらはぎにかけて不快な筋肉痛が残ったりする場合もある。 その対策として、ランナーにできることはあるだろうか?
ニーハイのコンプレッションソックスは、むくみや腫れを軽減する効果が高く、アスリートがエクササイズ後に感じる筋肉痛を緩和することが証明されている。 脚の静脈に関連するあらゆる問題を防ぐ効果も期待できる。 たとえば、飛行機内で履くと、深部静脈血栓症(DVT)、つまり長時間座ったままでいることが原因で脚に生じる血栓を予防できることが、研究で明らかになっている。
では、コンプレッション機能を備えたストッキングやソックスは、ランナーにも効果があるのだろうか? ここではその根拠について検証していく。コンプレッションソックスを普段のランニングウェアに積極的に取り入れるべきかを判断する上にあたり、役立たせてほしい。
ランナーの足、ふくらはぎ、太ももにむくみが生じる原因
ランニングを行うと、血流の増加により足の筋肉が膨らむ。筋肉を動かし続けるのに必要な酸素を届けるためには避けられない現象だ。 また、重力の働きにより、かかとから足先、足首、ふくらはぎや太ももに水分がたまる。 同時に、着地時に繰り返し足に衝撃がかかることで血管が傷つくため、毛細血管が密集した組織から筋肉に水分がしみ出しやすくなる。 水分の貯留や血流の増加に加えて、このように水分がしみ出すために、腫れやむくみが起きるのだ。
腫れやむくみは、短距離走より長距離のランニングでよく発生するが、多くの場合、心配の種にはならない。 過酷なマラソンの後でも、脚のむくみは数日で治まるはずだ。 とはいえ腫れやむくみを不快に感じる場合には、次のような対処方法がある。
- 冷たい水や氷で冷やす
- エプソムソルトの入浴剤を使う
- コンプレッション機能を備えたストッキングやソックスを履く
座ったままでいると、腫れやむくみは悪化する。血液が心臓に戻りやすくなるよう、運動の習慣を継続させよう。
コンプレッションソックスのメリット
コンプレッションソックスは、脚に圧力が段階的に加わるように作られているため、重力の作用を抑制し、血液を心臓に送り返すのを助けてくれる。 その結果、血行が改善し、腫れやむくみを最小限に抑えることができるのだ。
また、血管が圧迫されて血流のスピードが増すため、乳酸が脚から運ばれるスピードも速くなる。 乳酸はけいれんや痛み、疲労を引き起こす可能性があるため、コンプレッションソックスを履けばこれらの症状を抑制できる。また、シンスプリント、足底筋膜炎、アキレス腱炎の予防にもつながる。
さらに、リンパ液の排出、静脈瘤に伴う痛みの軽減、静脈性潰瘍や深部静脈血栓症の予防、立ちくらみを引き起こす起立性低血圧の緩和にも効果がある。
コンプレッションソックスを履くとパフォーマンスが向上するか?
2020年に行われた文献のシステマティックレビューによれば、エクササイズの際にコンプレッションソックスを履くことで、筋肉疲労の軽減、自己受容感覚(体の位置、バランス、緊張を感知する感覚)や運動能力の向上など、アスリートのパフォーマンスが改善されたことを証明した研究は、公表された21件の研究のうち3件だけだった。 また、どの研究でも、有益な結果の土台となるメカニズムは特定できていない。
さらに、ほかの研究ではこれらの結果を再現できていない。つまり、効果があると断言するランナーがたくさんいたとしても、コンプレッションソックスには、スピードや持久力の向上に効果があるとは言えなさそうだ。 しかし、いくつかの研究では、コンプレッションソックスを履くことで、エクササイズ後の筋肉の疲労や痛みが軽減されたことが示されている。 ランニング後に痛みや疲れを感じやすいのなら、コンプレッションソックスを履くと回復が早まるかもしれない。 コンプレッションソックスの力を借りてトレッドミルやトレイルに早く戻れるのなら、体調も整うはずだ。
コンプレッションソックスの選び方
1.サイズを確認する
コンプレッションソックスを購入する際は、サイズ選びが重要だ。 医療用のコンプレッションストッキングの場合、適切にフィットしていないと痛みやあざが生じる可能性がある。 ランナー向けのコンプレッションソックスでこのような問題が起きることはあまりないが、適切にフィットするものを選んだほうが、やはり履き心地は快適だ。 適切にフィットするものを選ぶ一番の方法は、何足か試着すること。オンラインで購入する場合は、サイズ表を利用するとよい。
ふくらはぎの最も太い部分と足首の最も細い部分の周囲の長さを測ろう。 また、コンプレッションスリーブを購入する場合は別だが、シューズのサイズを確認するために、つま先からかかとの長さも測定する必要がある。 サイズ表を参考にして、適切なサイズを見つけよう。サイズの選択に迷うなら、大きめのサイズを選ぶとよい。2.着圧レベル(mmHg)
コンプレッションストッキングの着圧レベルは、水銀柱ミリメートル(mmHg)という単位で測定され、数値が高いほど着圧が強くなる。 着圧レベルには次のような選択肢がある。
- 15mmHg未満:着圧レベルが軽度のコンプレッションソックス。長時間立ったままの姿勢でいることから生じる疲れを軽減するために作られている。 ランナーは、足首から足先の腫れやむくみを防げる程度の、軽めのコンプレッションソックスを選ぶことが多い。
- 15~20mmHg:着圧レベルが中程度のコンプレッションソックス。飛行機での移動時に役立つ。 長時間にわたり座ったままでいることから起きる深部静脈血栓症のリスクを減らす効果がある。 筋肉痛を予防する目的で、軽めのコンプレッションソックスより、こちらを好むランナーもいる。
- 20~30mmHg:医療用のコンプレッションソックス。通常は静脈瘤などの治療を目的に、医師によって処方される。
- 30mmHg超:段階的に加圧するストッキング。通常、手術後に血行を促進するために使用される。
3.主な機能
コンプレッションソックスは、カラーやスタイルの選択肢がたくさんあるだけでなく、その機能もさまざまだ。 選ぶ際は、以下のような機能に着目しよう。
- オープントゥ:気温が高い日にランニングする時や、つま先に何らかの問題があって不快感を引き起こす可能性がある場合は、つま先のないコンプレッションソックスを選ぶとよい。 着脱ももう少し簡単だ。
- コンプレッションスリーブ:かかとから足先に腫れやむくみが起きないランナーは、足首とふくらはぎだけを着圧するコンプレッションスリーブを選ぶこともある。
- 吸湿速乾性:足に汗をかきやすい場合は、通気性と吸湿速乾性に優れ、足をさらりと乾いた状態に保ってくれるコンプレッションソックスが望ましいだろう。
- 防臭性:メリノウールといった抗菌消臭素材が使用されているコンプレッションソックスもあり、足のにおいが気になる場合に効果が期待できる。
- 滑り止めなし:裏に滑り止めがついていないコンプレッションソックスもある。ランニング後に家でも履いて過ごしたい場合におすすめだ。
- トップバンド:ふくらはぎを覆うコンプレッションソックスの中には、ずり落ちないよう、ソックスの上部にバンドを備えたものがある。ペースを落としてソックスを直すような事態を避けたいランナーにおすすめだ。
- 足裏のクッション性:ランニング向けやハイキング向けの多くの基本的なソックスと同様に、衝撃を吸収するクッショニングを足裏に備えたコンプレッションソックスもある。
- マメの予防:多層構造でマメを予防するコンプレッションソックスもある。
- 速乾性:走る日の天気によっては、通気性や速乾性に優れた素材のコンプレッションソックスか、完全防水仕様のものを選ぶ必要があるだろう。 足を乾いた状態に保つことでマメを防げる。
よくある質問
コンプレッションソックスはどのぐらいの時間履く必要があるか?
ランニング中だけ、ランニング後数時間は履いたままにする、あるいは一日中履いたまま過ごすなど、夜寝る前に脱ぎさえすれば、履く時間の長さに決まりはない。 むくみや痛みの程度によって、履く時間を調整しよう。
コンプレッションソックスは足底筋膜炎の症状緩和に役立つか?
答えはイェス。 コンプレッションソックスには、血流を促進し、腫れやむくみを軽減して炎症を抑える働きがあるため、足底筋膜炎に伴う痛みを緩和する効果が期待できる。
ランニングに最適なコンプレッションソックスとは?
ランニングに最適なのは、着圧レベルが軽度または中程度で通気性に優れたコンプレッションソックスだ。 吸湿速乾性に優れ、濡れても乾きやすく、土踏まずをしっかりサポートするクッション性を足裏に備えたものを選ぼう。 ランニングには、ふくらはぎをサポートするコンプレッションランニングソックスが望ましいと言える。
コンプレッションソックスを履くことによる副作用はあるか?
コンプレッションソックスが適切にフィットしていない場合や適切に着用されない場合は副作用が生じる可能性があるが、ほとんどのケースが医療用のコンプレッションストッキングの使用時だ。 ただし、医療用のものでなくても、肌のかぶれ、擦り傷、あざに気付いたら、医師に相談したほうがいいだろう。 正しくフィットするコンプレッションソックスを選ぶために、専門家によるアドバイスが必要な場合もある。
コンプレッションソックスはどのぐらい長持ちするか?
一般的なガイドラインでは、コンプレッションソックスは3~6か月ごと、または生地が伸びてきたと気付いたら買い替えるよう推奨している。