飛躍的進歩につながるランニングの指標

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今よりもっと楽に走れるようになりたいなら、ルーチンに筋力トレーニングを加えてみよう。

最終更新日:June 1, 2021
ランナーが最大酸素摂取量(VO2 Max)を重視すべき理由

1回のランに自分の体がどう対処しているかを判断するには、ペース、目標タイム、心拍数、1-10段階での自分の力の出し具合など、多くの重要な数値が参考になる。有酸素運動能力の基準であるVO2 Maxはそうした主要データの1つだが、見過ごされることも多い。

この数値を高めることにより、ランナーとしての能力や健康状態がどのように改善されるかを理解するために、専門家に協力してもらい分析を行った。

疲れずに走れる距離が長いほど、VO2 Maxも高いと推測されます。

イアン・クライン
(運動生理学者)

VO2 Maxとは?

「V」は量、「O2」は酸素、「Max」は最大限を意味する。つまりVO2 Maxとは、運動中に体が消費できる最大酸素量を表す。この数値は健康の指標となるので、健康を目指すトレーニングを構成するには欠かせないデータだ。

VO2 Maxの算出は複雑だ。まず第一に、通常、1分間に体重1キログラムあたり何ミリリットルの酸素が消費されるかで表される(ミリリットル/キログラム/分)。これを正確に測るためには、スポーツ科学のラボで、アスリートがトレッドミルで全力で走っている状態で行うのが従来の検査法だ。そう説明するのは、スポーツ科学の分野で著名なシドニー工科大学教授、アーロン・クーツ博士(PhD)だ。

VO2 Maxを家庭で正確に測る方法はない(一部の活動量計には正確に測れると謳っているものもあるが、今のところせいぜい予測するだけだ)。だがトップアスリートではない我々一般ランナーにラボは必要ない。活動量計すら不要だ。VO2 Maxが向上するタイミングを知るのは実際はとても簡単で、それさえ分かればランに生かすには十分だ。「VO2 Maxはその人の健康状態に左右されます」とオハイオ大学でクロストレーニングと外傷予防を研究する運動生理学者、イアン・クラインは述べている。「疲れずに走れる距離が長いほど、VO2 Maxも高いと推測されます」

ランナーが最大酸素摂取量(VO2 Max)を重視すべき理由

VO2 Maxとランニングスピードの関連性

ランナーがこの値に関心を持つべき理由は? VO2 Maxが高くなると、ランニング中に筋肉に供給できる酸素が増える。ワークアウトの強度が上がっても、スピードが上げられるということだ。そうクライン博士は説明する。一般的にVO2 Maxが高ければ、乳酸閾値も高い。つまり乳酸が蓄積し、疲労がたまって運動を止めざるを得なくなるまでに、より長くハードなワークアウトができるということだ。

多くのランナーは「もう無理だ」という感覚を味わったことがあるはず。これは通常、体が無酸素性作業閾値と呼ばれる値を越えるときに経験する感覚だ。この感覚が生まれるのは、クライン博士によれば、体から排出されるよりも速いスピードで、水素イオンと乳酸が筋肉に蓄積され始めるときだという。この水素が二酸化炭素に変換され、二酸化炭素が増えるにつれて酸素が運ばれにくくなる。最終的に酸素がなくなると、全速力では走れなくなる。

VO2 Maxが高いほど、より効率的に体内で二酸化炭素を排出できるようになる。その結果、赤血球が運び込む酸素量も増え、筋肉の収縮運動を持続できる。クライン博士いわく、特にVO2 Maxを上げるトレーニング(詳細は後述)を実践すれば、筋肉中の毛細血管も発達する。これも筋肉に取り入れる酸素を増加させる変化だ。「酸素さえあれば、エネルギーに変換するのは簡単」とクライン博士は言う。より力強く、速いスピードで走れるのだ。

VO2 Maxの向上が健康増進につながる理由

VO2 Maxの向上は、ランニング以外にもメリットがある。肺が酸素をより効率的に取り込んで心臓などの筋肉に送り出せるようになるからだ。心臓が1回の拍動で送り出せる血液の量が増えれば、安静時心拍数が下がる。つまり、心臓血管系全体にかかる負担が少なくなるというわけだ。

長期的な健康への影響を理解するために、逆の側から考えてみよう。アメリカ心臓協会(AHA)によると、心肺機能が低い人、つまりVO2 Maxが低い人は、循環器系疾患や各種の癌になるリスクが高いと考えられている。AHAでは、喫煙や高血圧よりも心肺機能が低いことの方が、死亡リスクを予測する指標として有力だとしている。

VO2 Maxの向上が健康上の重大なリスクを減らす可能性があると研究で示されていることは、これで説明がつく。5キロメートルのランでの自己ベスト更新に役立つだけではなかったのだ。

VO2 Maxを改善する方法

残念なニュースから始めよう。VO2 Maxの最高値は、遺伝子の影響を受けるのだ。ほとんどの人がエリウド・キプチョゲみたいに走れないのはこれが理由。だが良いニュースもある。閾値の上限を長期間維持することで、数値を向上させられる可能性があるのだ。

それには、幅広いトレーニングを行うことが必要だ。長距離をゆっくり走るランと、スピードを上げたハードなトレーニングの両方を楽にできるようにする。健康のしっかりした土台ができれば(ゆっくりしたトレーニングとスピードを上げたトレーニングの両方が楽になったら土台ができている)、HIIT(高負荷トレーニング)を増やすこともできる。ご存じのように、HIITでは全力を出すハードな運動とリカバリーを交互に行う。この方法はVO2 Maxと乳酸閾値を高めるために特に効果的だ。このことは、VO2 Maxの向上には持久力トレーニングよりもHIITの方が効果的であることを発見した、学術誌『スポーツと運動の医療科学(Medicine & Science in Sports & Exercise)』掲載の論文をはじめとする研究で裏付けられている。

具体的にはどうすればいいだろうか?短い間隔でより高い強度を保てば、嫌気性システムが乳酸閾値に達する。これを繰り返すことで、やがてその強度でより長い時間より効率的に運動ができるようになる、とクライン博士は説明する。目指す強度は、800メートルのスプリントから2マイルを全力で走るペースの間がいいとのことだ。このレベルのハードなトレーニングに取り組むことで、「新たなレベルに適応し、強度を上げ、VO2 Maxを高めるために体が必要とする代謝上、生理学上の負荷が得られる」とクライン博士は言っている。30秒間全力疾走して30秒のリカバリータイムをとる。これを5分から10分繰り返す。あるいは、坂道でのトレーニングでできるだけ速く走ることでも、同じように酸素摂取量を改善できる。具体的なHIITとヒルトレーニングについては、Nike Run Clubアプリをチェックしてみてほしい。

今回紹介した情報を、次回のインターバルトレーニングで最大限の力を出すためのエネルギーにしよう。

文:アシュリー・マテオ
イラスト:ケシア・ガブリエラ

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