不安の活用法

Coaching

未来をコントロールすることはできないが、疑いの気持ちで進歩を妨げる必要はない。

最終更新日:2022年7月22日
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  • 未来に何が起こるかを知ることはできないが、不確かさを成長のための燃料にすることはできる
  • 疑惑と戦うのはこれが初めてではないだろう。これまでに疑いの気持ちと戦ってきたあらゆる方法を思い出してみよう。
  • 広大な未知の未来を思い描くと身がひるむかもしれないが、目標に向けての道のりを小さなステップに分割し、各ステップに1つずつ取り組めば恐れることはない。


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不安を受け入れる理由とその方法を心理学のエキスパートが解説

誰も未来を予言することはできない。なぜかあなたが犬を飼うことを知っていた占い師だってそう。誰もが知るように、人生は予測できない。私たちが好むと好まざるとにかかわらず、不確かさは疑惑に繋がることがよくある。第一志望の学校に入れるだろうか。マラソンでいいタイムを出せるだろうか。あの仕事に就けるだろうか。あなたの未来のすべての時間は、まだ決まっていない。不確かさは避けられない。

ただし、不確実な状況に落ち着いて対処できるようになれば、不安を抑えることができる。不安の緩和が追い風になり、手が届かないと感じる目標の達成につながる可能性もある。「この世界で確実なのは変化だけ。変化を受け入れるほど、新しいエネルギーが注入されて変化を楽しめるようになります」と、モリー・エリアソフ(ニューヨーク市の認定臨床社会福祉士であり心理療法士)は話す。

不確実な状況にうろたえる理由

先の状況が見通せないときに不安になるのは人間として当然だ。人類の祖先にとっては、「不確実な状況は危険を意味したので、何としても回避しなければならなかった」と、ロビン・バックリー博士(ニューハンプシャー州在住のエグゼクティブコーチ)は述べている。中に空腹のサーベルタイガーが潜んでいないか確認できないほど暗い洞穴なら、入るのは避けたほうが無難だ。

不確実な状況を回避しようとする本能は非常に根深い。だから、私たちは何も書かれていないドアを開けるよりも、様子がわかっている部屋で苦労を耐え忍ぼうとする傾向にある。英国で行われた研究がその好例だ。痛みを伴う電気ショックを受ける確率が50%と言われた場合より、100%受けることがわかっている場合のほうが、被験者が感じるストレスは少なかったという。

不安を受け入れる理由とその方法を心理学のエキスパートが解説

「未知のもの」を受け入れるべき理由。

わかる範囲にとどまったほうが賢いという場面は確かにある。夜中に家路につくとき、明るい通い慣れた道ではなく、暗く人通りのない裏道を歩くべきだとは誰も思わないだろう。「とは言え、冒険する力があるのに習慣やお決まりのパターンにこだわっていては、たとえそれが良い習慣だったとしても、創造性や新たな成長にはつながりません」とバックリー博士は述べる。

一方、見通せない状況でも冷静でいられるようになれば、「惰性で対処するだけでは出会えなかった人や物事に、遭遇できるかもしれません」と博士。シカゴ大学の調査では、不確実な状況によりモチベーションが高まり、良い成果を得られることがあるという結果が出ている。これを説明する1つの理論は、リスクをとることは興奮をもたらし、興奮はモチベーションを高めるというものだ。このモチベーションをフルに活用すれば、何もあなたの進歩を止めることはできない。

さらに大きなメリットは、不確実な状況を受け入れるたびに、心理的なハードルが下がっていくということ。「不確実な状況や困難に向き合えば、人間に自然に備わっている警報システムを調整でき、将来より多くのチャンスを手に入れるようになります」と語るのはマイケル・アンブローズ博士(ニューヨーク市の認定臨床心理士)。つまり、不確実な状況を受け入れていくうちに、勇気と自信が育まれるということだ。

未知の状況は非常に落ち着かないものに思えるかもしれないが、確実に対処できる。サルを対象にしたエール大学の研究では、予測できない状況によって前頭前野(感情的な反応を司る脳の部位)の活動が活発化することがわかった。同様のメカニズムにより、人間の脳も不確実な状況に置かれたとき、最も重要な情報に集中して最良の判断を下すことができると考えられる。

上手に受け入れる

不確実な状況から望ましい結果が生まれる(または生まれなかったとしても問題はない)と信じることは、言うほど簡単ではないように思える。なぜなら、実際に簡単ではないからだ。それでも、そんな不確実な状況に備えておくことは可能だ。重要なポイントを説明しよう。

不安を受け入れる理由とその方法を心理学のエキスパートが解説

1. AやB以外にも選択肢はある。

先がわからないという不安は、二者択一に囚われることで増幅される可能性がある、とエリアソフ氏は説明する。たとえば、今の仕事はあまり自分のためにはならないが、希望に応じて在宅勤務ができる点は気に入っているという場合。進むべき道を検討するとき、A)好きではない仕事をする、B)通勤不要の新しい仕事を苦労して探す、のどちらかを選ばなければならないと思い込んでしまう。

実際のところ、選択肢は2つだけではない。「AもBも、いくつかのカテゴリーに細かく分けて考えればいいのです。すると可能性が開け、コントロールできるという感覚が得られます」とエリアソフ氏。今の仕事を続ければ、結果としてより達成感が得られる仕事に力を注いだり、自分を成長させてくれるチームとの関係性を強めたりすることにつながるかもしれない。新しい仕事を探す選択をすれば、他の職に応募する前に自分のスキルの市場価値を高めるために、講習を受けることになるかもしれない。このように考えれば、未知は怖いというよりは、エキサイティングだ。

2. 自分の経験を振り返る。

新しい状況に対処する自分の能力に疑いを持つのではなく、パンデミックの最中にどのように生活してきたかなど、これまで自分が困難にどう対処してきたか振り返ってみるとよい。「経験に基づいて楽観的な考え方ができるなら、それを活かせばいいのです。以前うまくいったとわかっている方法なら、また次もうまくいくはずです」とバックリー博士は話す。

ちなみに、単に「自分ならできる」と言うよりも、実際に成功を導いたことのある特質を自覚するほうが役立つ。その理由は、バックリーによると、対処できる能力がすでに備わっているという確固とした証拠を、脳に与えることになるからだ。未知の領域に踏み込もうとする場合でも、前にも同じような状況に対処したことを思い出せば、またうまくいくはずだ。

3. 細かく分ける。

取り組むべき大きなタスクを目の前にしながら、対処する方法がわからない場合は、予測できない状況に圧倒される。そんなときは、小さいタスクに分けてロードマップを作り、一つひとつのタスクを期日までに完了させることに集中するとよいと、エリアソフは推奨する。「一つのタスクを終えるたびに達成感が得られ、コントロールしている、先も見えてきたという感覚につながります」。加えて、進捗状況が目に見えるようになれば、状況が悪化しても踏ん張って耐えられるはずだ。

4. 自分に優しくなろう。

幼い子供が何かについて心配していると言ったら、それにどう対処するだろうか。おそらく、最悪のケースについて、または物事がいかに悲観的かについて語り始めたりはしないだろう。それと同様に、自分自身に対しても優しくなろう、とエリアソフは言う。信頼できる誰かに心配事を相談する。実現する可能性のある良い結果について考える。またはバスケットボールで遊んだり、TikTokの笑える動画を見たりなど、つらい状況を少しの間忘れられるようなことを自分に許す。「ここでの目的は、何事もうまくいくと言い聞かせて忘れてしまうことではなく、不安を落ち着かせて自分自身を支えることです」とエリアソフは言う。気持ちが落ち着くだけでなく、思考が冴え、問題を解決しやすくなる可能性もある。

5. 今のこの瞬間に意識を向ける。

将来を恐れるということは、特に悪い事態が発生しているわけではない現在に意識を向けられず、脳が先走っているということだ。今この瞬間に気持ちを向けるためにバックリー博士が勧めるのは、毎晩その日うれしかった出来事を3つ書き留めること。「一日中、無意識にうれしいことを探そうとするようになります。窓を這うテントウムシを見つけたとか、朝一番にペットの犬が顔をなめてくれたとか、単純なことでいいんです。すると、今の瞬間を見つめて思考をコントロールする能力が高まり、結果的に感情をコントロールできるようになります」バックリー博士は言う。なぜなら、希望の仕事に就くことができるかどうかや、人生でベストのレースを走れるかどうかは分からない一方、疑いに進歩を邪魔させるか、または疑いをバネにして進歩するか、それを決めるのは100%あなた次第だからだ。

文:マリーグレイス・テイラー
イラスト:ダビデ・ボナッツィ

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