悩まずに健康的な選択を

Coaching

意思決定の神経科学に基づく科学的なアプローチを利用して、もっと簡単に、より健康的な選択をしよう。

最終更新日:2020年12月22日

人生は選択の連続だ。起床するかスヌーズボタンを押すか。ランチは作るか買いに行くか。ヨガマットを広げるかハッピーアワーに繰り出すか。健康に気を付けようとすると、いつもこんな選択を迫られる。一瞬で決められてほとんど記憶にないこともあれば、悩んで出口が見えなくなることもある。

目標を達成するための意思決定術

健康的な決断をしようとして苦しむことは誰にでもある。このプロセスに特化した、意思決定神経科学という研究分野もあるほどだ。ここでは、脳が意思決定を行うメカニズムや、意思決定に影響を与える無意識の要因、そして誰もが目標に到達するためにどのように情報を利用すればよいかを解明するための研究が行われている。

これまでに分かっていることについて説明する。ニュージーランド、オークランド工科大学運動科学教授のポール・ラウルセン博士によると、脳の意思決定は2つのシステムに分類でき、単純にシステム1、システム2と呼ばれている。「システム1は速い思考。とっさの判断で環境による影響が大きく、いつも筋が通っているとは限りません」、と彼は説明する。システム1が優位に働くのは、例えばリスが道路に飛び出し、ブレーキをかけるか、ハンドルを切るか、そのまま走り続けるかの判断を迫られるとき。また、口論の後にドアをバタンと閉めたり、割れたグラスの破片を無意識に素手で拾ってしまったりする際にもシステム1が優位になっている。システム1の意思決定は成り行きまかせと言ってもよい。

一方、システム2は「時間のかかる遅い思考です。副交感神経が優位になる『休憩と消化』モードで、一般に理にかなった判断ができます」とラウルセン博士。システム2をうまく使えるよう訓練することが、常に健康的な選択を行うための鍵。特にとっさに行動(反応)してしまいがちなストレス、空腹、疲労をはじめとする感情的に負担の大きい状態では重要だ。時間をかければ、自分の選択の結果を予測して、自分にとって最良の意思決定を行うことができると、ラウルセン博士は説明する。

朝食を注文するときのことを考えてみよう。フレンチトーストに目が釘付けになりつつもアボカドトーストも気になる場合、意思決定に時間をかけてシステム2が優位に働くと、アボカドトーストを選ぶのではないだろうか。これは、アボカドトーストの方がタンパク質と脂肪が多く糖質が少ないため、午後のワークアウト中に安定したエネルギーをもたらしてくれると判断するからだ。(どうしても食べたいという理由でフレンチトーストを注文するが、後で胃もたれしないようにパートナーと分けるという選択肢もある。)ちなみに「時間をかける」といっても注文を決めるのに何時間もかける必要はない。意思決定の時間が1分ほどであったとしても、朝食のロールパンをただ口に入れるよりは十分に時間をかけているということ。(時間は本当に重要だ。『Nature Human Behaviour』に発表された最近の調査によると、たくさんある選択肢を2つに絞ることが、最良の意思決定を迅速に行う上で役立つという。)

「システム2をうまく使えるよう訓練することが、常に健康的な選択を行うための鍵。特にとっさに行動(反応)してしまいがちなストレス、空腹、疲労をはじめとする感情的に負担の大きい状態では重要だ。時間をかければ、自分の選択の結果を予測して、自分にとって最良の意思決定を行うことができます」

ポール・ラウルセン博士、ニュージーランド、オークランド工科大学運動科学教授

訓練すればうまくスローダウンできるようになると、ラウルセン博士は語る。手始めに、1日に何度か意思決定に最低60秒かけてみよう。例えば、ランニングの距離を決めるときや午後の休憩にコーヒーを飲むかどうか決めるとき。今日はもう自分の時間が取れそうにないから長めに走っておこうと考えたり、2日も続けて睡眠不足になりたくないからこれ以上カフェインは取らない方が良いだろと判断したりするようになるかもしれない。

目標を達成するための意思決定術

この練習は、感情的になったとき、つまりシステム2の思考を意識的に働かすことができないときに特に役立つ。例えば、上司とのイライラするような会話で1日を終えた後、状況に影響されやすく瞬時に思考するシステム1の脳は「飲むしかない!」と叫ぶかもしれない。だが、システム2の脳を呼び起こせば、1時間ヨガをする、読書する、絵を描くなど、気持ちを落ち着かせるヒントが思い浮かぶ可能性がある。

どうしても感情的な考え方から抜け出せず、ストレスにすぐ反応してしまうなら、呼吸に集中してみよう。それにより「神経系を鎮め、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑えることができ、思考が明晰になります」と話すのは、コロラド州ボルダーを拠点とするパフォーマンスサイコロジーコーチで、Elevation AthleticsとLifesparqのオーナーを務めるエリック・ステファンスキ。彼のお気に入りの呼吸法の1つがボックスブリージング。4秒かけて鼻から息を吸い、4秒間息を止め、4秒かけて鼻から息を吐き、また4秒間息を止める。これを2分間、または気持ちが落ち着くまで繰り返すというものだ。

それでもまだ意思決定に苦しむという人には、長期的な視点で考えることを勧めるというのは、スイス、バーゼル大学意思決定神経科学センター長のセバスチャン・グルート博士。『Nature Human Behavior』の研究論文の執筆に中心的に携わった研究者だ。長期的に考えるということは、数週間、数か月、数年経った後、自分がどうなっていたいか、どんな気持ちでいたいかをイメージすること。つまり展望記憶システムという新しいシステムを働かせるということだ。展望記憶が活性化すると、我慢を伴うが達成感の大きい意思決定をしやすくなることが研究で明らかになったとグルート博士は語っている。

長期的な視点で考えると、アボカドトーストを選択する理由は、ワークアウトのパフォーマンスを高めるのに役立つと判断したからだけではない。今日の堅実な行動によって強い自信が得られ、明日のワークアウトへのモチベーションが高まり、トレーニングを続けるための気持ちの好循環が生まれることを理解したからだ。

毎日一つひとつの意思決定を細かく管理するなどとてもできないが(そんなことをしたら疲労困憊してしまう!)、より良い意思決定を導き、健康的な生活を送るための秘策がここにある。この秘策を活用するかどうかは人それぞれ。だが実行はそれほど難しくないはずだ。

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