ランナーズハイとは?

健康とウェルネス

長距離走った後に「ハイ」なっていると感じるのはなぜだろうか。

最終更新日:2022年4月27日
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ランナーズハイとは具体的に何なのか?

人はさまざまな理由でランニングが好きになる。 外に出て新鮮な空気を吸う口実である場合もあれば、カロリー燃焼効果のためにランニングを選ぶ場合もある。 いずれにせよ、このエクササイズがメンタルヘルスの面で多くのメリットをもたらすことに多くの人々が同意するだろう。

1日5分から10分走るだけでも健康によい影響がある。多くの人が定期的にランニングシューズを履いて外に出るのはそのためだ。 このエクササイズが心地よくなってくると、走る距離を徐々に延ばし始めても大丈夫だと思うようになる。 あっというまに、フルマラソンへの初出場など、長期的な目標を立ててしまうこともあるだろう。

距離を延ばし始める前に、ランナーズハイと呼ばれる状態に入ってしまうことさえあるかもしれない。 しかし、ランナーズハイをすべてのランナーが経験するわけではないということに留意する必要がある。 すでにランナーズハイのメリットを得ている人も、どうしてそのような状態になるのかわからないだろう。

ランナーズハイとは?

ランナーズハイとは、走った後に短時間訪れる強い幸福感のことを言う。 この感覚は、穏やかな気持ちをもたらし、高負荷のワークアウトをした後よりもさらに落ち着いた状態になる。 例えば、ランニングの後に、疲れ果てて気分が悪くなるのではなく、ランナーズハイによってエネルギーが湧いてくるように感じ、爽快感を得る。

めったにないが、「ランニング中」にもそうした体験をするには、少なくとも数キロは走る必要がある。

名称の由来は?

名称の由来ははっきりしないが、一説によると、1970年代に科学者が、ランナーが経験することのある一連の心理的変化を定義するために用いたと言われている。 米国でレクリエーションとしての第一次ランニングブームが起こって以来、ここ10年で、この独特な体験をするランナーが散見されるようになった。

当初、ランナーズハイの定義に分類されたのは、生体化学反応の有意な変化、特に気分の改善だった。

ランナーズハイはどれくらい続く?

ランナーズハイは高揚感や開放感をもたらすものの、そう長くは続かないことが多い。 非常に強い感覚の爆発であり、長くは続かない一瞬の強い幸福感であると考えられる。 しかし、一部のランナーにとっては、そうしたつかの間の感覚が、距離を延ばし強度を上げ続けることで、そうした感覚を定期的に得ようとする動機になる。

ランナーズハイはすべて気持ちの問題?

さまざまなエクササイズが引き金となって、身体はエンドルフィンを放出する。 エンドルフィンは、幸福感を生み出す化学物質だ。 エンドルフィンは、天然の鎮痛剤としても作用するため、長距離ランナーやハードなランに挑む人には実にありがたいものだ。

当初は、エンドルフィンがランナーズハイの主要因だと考えられていた。 こうした神経伝達物質は、筋肉の痛みを和らげることで知られており、ランナーズハイの効果の一部となっている可能性がある。 しかし、最近の調査は、エンドルフィンはランナーズハイの主要因ではない可能性があることを示している。

科学者は現在、ランナーズハイをもたらす強い高揚感は、エンドカンナビノイドシステムと呼ばれる身体の生体系から生み出されると考えている。 エンドカンナビノイドシステムは、エンドカンナビノイドという化学物質を放出する。 この物質が血中を循環し始めると、穏やかな気持ちになり、陶酔感さえ覚えるようになる。 エクササイズをすると、体内のエンドカンナビノイドレベルが上昇する。

エンドルフィンとエンドカンナビノイドはもたらす感覚は似ているが、体内で循環する場所に大きな違いがある。 エンドルフィンは血流と脳の間を移動することができない。 エンドルフィンは微細だが、血液脳関門を突破して循環するには大きすぎるのだ。 一方、エンドカンナビノイドは血流と脳の間を移動することができる。 つまり、エンドカンナビノイドは脳に移動できるが、エンドルフィンはできない。

ドーパミンも役割を果たす

ランナーズハイの素に追加すべき、もう1つの化学物質がドーパミンだ。 この神経伝達物質は、「気分を良くする」化学物質として知られている。 ドーパミンは幸福感を生み出し、気分を少し高め、走った後に達成感をもたらす。

何かとてもよいことが起こったときも、ドーパミンが急上昇するのを感じるだろう。 身体の報酬システムのようなものだ。 厚切りのチョコレートケーキにありつくときや、仕事で表彰されて喝采を受け、紅潮しているときに感じるのがドーパミンだ。

ランナーズハイは意図的に誘発できる?

ランナーズハイは、脳内や体内の複数の化学物質が互いに調和して生み出すものだ。そのため、この感覚を引き起こす特定の方法はない。 確実と思われるのは、長く走れば走るほどランナーズハイを体験する可能性が高まるということだけだ。 自分がランニングで「ハイ」になれるタイプかどうかを知りたいならば、少なくとも数キロは走る計画を立てる必要がある。

しかし、忘れないでほしいのは、ランナーズハイを体験できる保証はないし、それでよいということだ。 科学者は、ランナーズハイを体験する人としない人がいるのはなぜか、依然としてわからずにいる。 そして、こうした感覚を引き起こすのはランニングだけではないことに気付き始めている。 サイクリングや水泳などの他の有酸素運動も、ランナーズハイのような感覚を起こすさまざまな化学物質の分泌を誘発する。

ランナーズハイによってもっとエクササイズするようになる?

ランナーズハイを体験する人は、たいてい、何度も繰り返しランナーズハイを体験し続けたいと思う。 さらに、エクササイズをして気分が良くなることの主なメリットとして、ワークアウトが楽しくなるということが挙げられる。 距離を延ばして体力を付けようと頑張っているランナーは、ランナーズハイを体験することで、頑張り続ける動機を得る。 長く走った後にこうした陶酔感を味わえることを知れば、もっとエクササイズするようになるかもしれない。しかし、それがランニングを選択する主な理由にはならないだろう。

ランナーズハイは危険?

「ハイになる」というと、ネガティブなニュアンスを感じるかも知れない。 しかし、思い出してほしい。ランナーズハイは、体内で自然に生成された化学物質によって生み出されるものだ。 エンドカンナビノイドシステムは、外部から一切サポートを受けずにランナーズハイを生み出す。

ランナーズハイを体験する一部のランナーは、ランニング後に不安や痛みを感じることが少ない。 こうしたランナーは、穏やかな気持ちになるため、ワークアウトから得られるものがやや多い。 長期的な健康上のメリットに関しては、ランナーズハイが、少なくともそれだけで健康全般を改善することを示す研究結果はない。

しかし、ランニングに関連する健康上のメリットはたくさんある。

ランナーズハイになってもならなくても気分が良くなる

ランニングや有酸素エクササイズのメリットに関して言えば、ランナーズハイは氷山の一角に過ぎない。 ランナーズハイを体験したことがなくても、ワークアウトルーティンに定期的なランニングを追加することで、次のような効果が得られる。

  • 柔軟性と可動性の向上
  • 免疫システムの増強
  • 記憶力と集中力の向上
  • 全般的な気分の向上
  • 減量のサポート

集中して走った後に疲れ切り、さらに10キロ走る気になれなくても、間違いなく身体によいことをしている。それが重要なことだ。

公開日:2021年12月23日

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