OWN THE FLOOR | AYANE
個性を貫き壁を破る
軽快な足さばき、背中や頭を床につく豪快なムーブ。1970年代初頭のニューヨーク・サウスブロンクス地区のストリートで生まれたブレイキン(ブレイクダンス)は、今や世界中に広がり「スポーツ」になった。ストリートからスポーツへと変遷したシーンの中で、ダンサーたちは自身のスタイルを確立するために常に技を磨き続けている。
大阪育ちのAYANEは、ブレイキンの従来の価値観を塗り替え、壁を突破しようと挑戦するダンサーのひとりだ。女性らしさや、男性らしさ。そんな概念なんて超えて「私のブレイキンって何?」 ––– 彼女はそう問い続ける。「私を見ろ」と言わんばかりに豪快に回る彼女のスタイルはどこからやってきて、今どこへ向かおうとしているのか。
性別の垣根を飛び越える
「小学生の時にトランポリン競技に取り組んでいました。そのクラブにブレイキンのダンサーがアクロバットの練習に来ていたことが、私がブレイキンに触れた最初のきっかけです。その後、ブレイキンの大会を観戦に行った時、当時数も少なかったB-GIRL(女性のブレイクダンサー)の方々のダンスを見て衝撃を受けました。女の人でもこんなにカッコよく踊れるんだ、って。
元々カッコいいものが好きな性格だったので、ブレイキンのダイナミックな動きにすぐに惹かれましたね。昔はまだ大技にフォーカスを当てているB-GIRLが少なかったんですけど、BOYとかGIRLの壁を壊したいって想いが自分の中にあって、性別は関係なく派手な技や力強いムーブを取り入れたのが今の自分のスタイルの軸になってます。
ブレイキンを始めた頃から女性がやらないことをやろうって想いはあったんです。それをさらに強く感じたのは、ある女性同士のダンスバトルに出場した時ですね。そのバトルでは負けてしまったので、ジャッジの人に敗因を訊いたんです。そしたら「もっと女の子っぽく踊りなよ」みたいなことを言われて…。まずそもそも『女の子っぽく踊るって何!?』って思ったし、自分のダンススタイル自体を否定されてる感じがして。じゃあもう自分のスタイルは絶対に貫こうって決心しました」
いつも自分を信じて踊ること
「自分を貫くために大事なことは、やっぱり自分を信じること。時代性や流行ってあると思うんですよね。でもその時に軸がブレて、勝てるスタイルに寄せちゃうと結局自分が何をしたいかわからなくなって、最終的にダンス自体も楽しくなくなってくるんじゃないかなって。自分が好きで続けてきたことはベースには置いて、自分だけのスタイルをつくっていくべきじゃないかな。
仲間たちもそれぞれずっと自分のスタイルを貫いてやってきています。ただ自分を信じていかにレベルアップさせるかだけですね。世の中って変動するんで、それに振り回されちゃうと自分のスタイルって変わってきちゃう。だからひたすら自分で自分をどう評価するかにフォーカスを置いて普段の練習をやっているので、仲間たちといるときも世間やダンスシーンに対して物申したいことはあんまりないです」
その瞬間を100%楽しむ
「ダンサーを『アスリート』だという見方をすれば、私は今よりストイックじゃないといけないですし、フィジカルトレーニングも食事面も気を遣って世界のステージで戦っていかなきゃいけない。でも、ダンスがスポーツと呼ばれるようにはなったとはいえ、根本的にダンスの良さは残さないといけないと思います。自由だし、正解はないから、自分のダンススタイルを貫いて楽しむことは忘れたくないですね。
いつも、その場でしか出せないものを100%残すぞって思ってお客さんの前で踊ってます。音楽だったり、お客さんの反応だったり、その瞬間奇跡的に出たものだったりを全部含めて、見てくれた人が『今日のAYANEやばかったな、今日のAYANEすごかったな、今日一番カッコよかったな』って思ってもらえるように、いつもその瞬間を踊ってやろうって思います」
AYANEの挑戦はまだ始まったばかり。他のダンサーたちのストーリーもチェックしよう。